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ヴァンパイア 最期の聖戦 (1998年)

- 反撃のヴァンパイア・スレイヤーズ -

 ジョン・カーペンター、やっぱアンタは最高にイカス映画監督だぜ!

 いや、つい最近ようやくヴァンパイア・最後の聖戦をDVDで観たのだよ。
 この作品、興味はありながらも何か知らんが縁がなく、今の今まで見逃していたからなぁ……(公開されてもう4年か?)

 しかしこんな良作を今まで観てなかったのだから、ここ数年のオレは随分損をしていた事になる。

 で、感想はもうお解かりの通り、100%大好きなタイプのカーペンター映画でした。
 個人的には要塞警察、ニューヨーク1997の次に好きな作品となってしまったよ。
 この私的評価は、近年の同監督作品の中では突出していると言っても良い(かなーり好きなエスケープ・フロム・LAよりも上だ)
 B級ホラーアクションの紛う方なき大傑作!
 イントロのスレイヤーズの吸血鬼屋敷への殴りこみからして、もうアドレナリン出まくり状態(笑)
 不死身のモンスター軍団を相手に、近代的な銃火器と銛付きボーガンで突入するチーム・クロウ。
 戦力の逐次投入をしてくるオバカな吸血鬼相手に、弾装が空になるまで銃を叩き込み、乱闘しながら槍で腹を突き刺しまくり、最後にワイヤー付き銛で射て、屋敷の外に待機しているジープのウインチで銛ごと獲物を引き釣り出す――いや、すげぇ荒っぽい吸血鬼退治だこと(笑)

 しかしその後がまたカックイイ。
 太陽の下に晒された吸血鬼たちは、ま、お約束通り灰になるのだが、その前にまるでターボライターのように発火して燃え上がるのだよな(一気に全身が燃え上がるんじゃなくて、少しづつ火柱が立っていくあたり、非常に芸が細かい)
 で、この引き釣り出す→爆火のプロセスが、映像的にも非常にテンポがよく、残酷なシーンとはいえ妙な快感を感じてさせてしまうのだ(で、その観客が感じるであろう快感に対する鎮静剤なのが、その修羅場で唯一顔をしかめる神父なのだろう。でないとこのフィルムはヒジョーに危ない)
 ふと思ったが、この辺の吸血鬼退治のシチュエーション――
 エイリアン2で不満に感じた部分の、個人的意趣返しとしても非常に嬉しい。
 というのも、海兵隊がエイリアンの巣に突入した時、ライフルが使用出来なかったでしょ?
 せっかくバリバリとパルスライフルでエイリアンどもを皆殺しにしてくれると思っていたのに……(この感情はエイリアン1を観ていたら、さらに強くなる。あの憎たらしいエイリアンどもを、人間の開発した最新兵器で完膚なきまでにぶっ殺せる、とね(笑))
――で結局、何も出来ないまま海兵隊はあそこで戦力の大半を失い、主人公たちは劣勢を強いられるんだもん。
 そりゃフラストレーションはたまる罠(笑)
 ところがこのバチカン派遣のスレイヤーズは、そんな制約は一切抜きに暴れられるんだからな。
 燃えるな、って方が無理(笑)
 しかしこのまま完全勝利してしまっては、映画が続かないのも、これまた真実。

 ヴァンパイア・マスター(あの魔鬼っていう意訳はセンス無さすぎ。ただのマスターじゃまずいの?)を捕り逃してしまい、その苛烈な反撃のために――夜間という事もありチーム・クロウ、敢え無く壊滅(ぎゃふん)
 生き残った隊長ジャックとその相棒モントヤの二人だけで、咬まれた娼婦カトリーヌを餌に、ヴァンパイア・マスター・バレックへのリヴェンジを挑むのであった……

 で、バチカン側に裏切り者がいるらしい事。
 バレックがどうやら曰く付きの黒十字架なるものを探しているらしい事。
 カトリーヌがバレックとテレパシーで繋がっている事。
 ――そういったドラマの外郭が、次第に明らかになってくる……
 そんな時、バチカン枢機卿からジャックたちの元に、新たな神父アダムが派遣され……
 う〜む、どうしようもなくカーペンターだ(笑)

 しかしこの監督、漢気溢れるドラマを描かせれば、比類なきカッコよさを見せるんだよな〜(だから個人的に此処まで惚れ込んでいるのだが)
 要塞警察のナポレオン、ニューヨーク1997のスネークは言うに及ばず、今作でも非常に魅力的なヒーローを創作している。
 しかも、3人も!!

 まず主人公のジャック・クロウ。
 こいつはただの復讐者である。
 正義もヘッタクレもない。
 ただ自分の家族を不幸にした吸血鬼を、死んでも許せないだけの男。
 しかも下品でFuck!〜Shit!を事あるごとに連発し、振る舞いには教養のかけらも感じられない。
 勿論、敬虔な信心なぞもある筈が無く、一度敵意を持った相手にはマジに情け容赦がない(相手が仮に人間であろうと)
 で、こんなヤクザもんが、クルセイダー(聖戦士)等と呼ばれているのだから、たまらないよな(笑)
 ただね、コイツは非常に友情に厚いヤツなのだ。
 クライマックスのモントヤとのやり取りといい、アダム神父との関係といい、実に観ていて憧れてしまうよ。
 甘いだけじゃない、まさにハードボイルドな漢たちの渋い友情ドラマを魅せてくれるのだな。
 演ずるは、ジェームズ・ウッズ。
 序盤はただのイヤな親父にしか見えないのだが、中盤以降それが薄れていき、最後の貼り付けのシーンあたりから一端のヒーローに見えてくるのだから、全く持って不思議なもんである(前髪が降りてるせいで、表情が柔らかく見えるからかも)
 悪役面のジェームズ・ウッズは正に適役といえるだろうし、終盤のヒロイズム溢れる演技は流石としか言いようが無い。
 次に、ジャックの相棒、モントヤ。
 こいつもジャックとは違う意味での、典型的なカーペンター流タフガイの一人。
 彼はゼイリブのパイパーやフォッグのトム・アトキンス等に見られるような大柄なレスラー的容貌をしており、劇中においては頼りになる事この上ない――いわゆる不屈の男ってヤツだ。
 実際モントヤは中盤、吸血鬼化したカトリーヌに咬まれながらも、その傷口をライターや熱くなった銃身で焼き清める事で吸血鬼化を抑制し、最後まで頼れる相棒としてジャックを助け続けるのである(ホント、恐ろしいほどに強靭な精神力だね)
 しかもその事はクライマックスまでジャックに隠したまま――
 ここで普通のヤツだったら、もっと早い段階で友人(ジャック)に全てを話し、自ら死を選ぶのだろう(良心的な人間の一反応としてね。実際、カトリーヌはそうしようとしているし)
 しかしモントヤはそうしなかった。
 最後まで自分を保ちつつジャックと共闘できる自信があったんだろうし、カトリーヌに惚れてしまった手前、彼女を守るのは自分しかいないとも断じていたのだろう。

 ラストシーン――全てを語り終えカトリーヌと共に南へ逃げると告白するモントヤに対し、ジャックはどう反応するのか?(この辺、やはり西部劇だよなぁ。逃亡者が南……つまりメキシコに逃げるというのは、ある意味お約束だもん)
 ここはこの映画で一番おいしいトコなんで、是非フィルムを見てくださいな。
 そして最後のヒーロー、アダム神父である。
 このヒト、初めのうちは非常に情けないキャラクターとして描かれている。
 頭でっかちで世間知らずの若き神父――しかもバチカン側に裏切り者がいるらしいので、そういったフィルターも観てる側にあるから、余計に胡散臭く感じてしまうのだ。
 しかし中盤以降、非常に真っ直ぐな人物である事がわかり、ついにあのジャックがアダム神父を信用していくプロセスを経て、次に観客が思うのが「この神父、いつ殺されるんだろう?」――である(苦笑)
 お世辞にも運動神経が良い様には見えないしね〜(サッカー云々のジャックとのやり取りも、絶妙)
 終盤の吸血鬼退治において、神父が刑務所内で自ら囮になると言い出した時点で、「ああ、ついにこの神父さんも……いいやつだったのに」――と、観客全員が思ってしまったに違いない(劇中のジャックやモントヤもそう思ってたくさいし(笑))
 が、しかし、である。
 彼はなんと生き残る。
 しかも一番重要な場面で、まるでトランプのワイルドカードの様な役割を果たす事になるのだ。
 この映画、実はひ弱で脆弱な青年神父が、一端のヴァンパイア・スレイヤーへと成長していく物語でもあったのだな。
 このカッコよさは、そんじょそこらの映画にはないものだ。

 ラストのジャックとアダム神父のやり取りは、その下品な会話も含めて最高にイカス!
 モントヤに変わり、このアダム神父が新しいジャックの相棒になったのだ。
 この時の十字架のやり取りも、実に意味深。
 神父のバチカンへの反逆心(だって吸血鬼を産み出したのは、キリスト教の信仰そのものだったのだからね)と、それとは逆に未だ持ち続ける信仰に対する純粋さの両方が見えてくるのだな。
 一方ジャックは、今まで屁とも思ってなかった十字架を神父から受け取りポケットに突っ込むのだから……この辺の対比演出は実に見事なり。

 そうそう、十字架といえば、やはり今回もカーペンター流に表現されておりました。
 フォッグの黄金の十字架もそうだったが、今作の黒十字架もそう。
 役に立つのか立たないのか……むしろ用途的には悪のアイテムだったりするし。
 ラスト、バレックを黒十字架で串刺しにするも、トドメはさせなかったし……
 この監督の宗教観ってのは、ニヒリズムが根底にあるのは間違いなかろうけど。
 映像的にもカーペンターらしい、素敵シーンが沢山あったな(笑)
 特にヴァンパイア軍団が地面から這い出てきて、荒野にズラッて佇んでいるトコとか、終盤ジャック、モントヤ、神父の3人がスレイヤーズとして敵地に乗り込むトコとか、もうミーハーにカッコよく撮ってある。
 これから戦いに挑む勇者たちの図というのは、やはり西部劇ライクな演出だよな。

 それと序盤に全滅したスレイヤーズたちのいたホテルで、死体を吸血鬼化しないように処理するジャックの描写は、何ともリアルな感触で映像を見せている。
 あんな事、真っ当な神経を持ってるヤツじゃ耐え切れんだろうなぁ。
 つまり狂的なジャックのキャラ造詣が、あのシーンで間違いなくリアリティを得ているのだ。
 確かに観ていて不快感しか沸かないが、物語的に必要なシーンであるのは間違いない。

 ……………

 ああ、この文章を書いてたら、また観たくなってきた。

 今度は吹き替えで観るとするかね。
 ――ホント、DVD様々だな(笑)
 
2003年9月29日(月) 






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