くたばれ、マーフィ。これで最後だ!

ヤングガン (1988年)

- 駆け抜けるビリー・ザ・キッドたち -

 「くたばれ、マーフィ。これで最後だ!」

 ――そう吐き捨てながら馬上のビリーが放った渾身の一発は、ゆうに50メートルは飛び越え、見事に悪党の眉間を打ち抜くのである。

 くぅ〜、やっぱカッコいいっす(笑)

 新しい映画には目もくれずに、古いソフトばっかり買い漁っている私ではあるが――
 今月購入したのがこれまた個人的に思い入れの深い、数少ないリアルタイム西部劇『ヤングガン』である。
 実は続編の『ヤングガン2』は既に他社からDVD化されていたのだがね、やはり揃えるならきちんと1作目から欲しいと思って買い控えていたのだな(ま、LDを持っていたから、そう慌てる必要もなかったのだが)
 しかし今春ついにパート1が発売の運びとなり、さっそく勇んでamazonにて購入。
 豊富な映像特典にいつも同様、幸せいっぱいになりながら、腰を据えて映画を再見する事となった次第。

 ご存知のとおり、我々は『TV放映される西部劇』の世代だ。
 クリント・イーストウッドの声は山田康雄以外に考えられないほど、である(笑)
 そんなワケで、物心ついてリアルタイムで製作された西部劇など、マジに数えるほどしかない。
 『ペイルライダー』『シルバラード』『ロングライダーズ』『ヤングガン1〜2』『ストレート・トゥ・ヘル』『クイック・アンド・デッド』――そして西部劇全体の終幕でもある『許されざる者』……(このラインナップに『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』も入れていい……のかな?)
 そんな中で、自分が一番シビれたウエスタン――それがこの『ヤングガンシリーズ』である。

 実際今になって観なおしてみても、この映画――ホントによく出来ているのがわかる。
 シナリオも良いし、演出も上品。
 全体的に幾分「わかりやすすぎ」さを感じんでもないが、当時の若手人気俳優総出演(ブラットパック)を考慮すれば、それも致し方なし。
 「いまさら西部劇」なんだろうし、若年層の観客を呼び込む為にも仕方なかったんだろう。
 個人的にはデジタルビートのBGMや、銃で撃たれる時などのSE等を、もう少し何とかして欲しかった――が、これらも意図的にやっている事なんだろうしなぁ(ジャンルは多少違うけど、同じ方法論で製作されている『レディホーク』では、BGMもSEもそんなに違和感がなかったのだがね)

 とまぁ、西部劇をずっと観てきた者からすれば不満な点も多々あるが、それでも新たなチャレンジとして製作されたこの作品を、俺個人はかなり好意的に受け取っている。
 例えば、登場人物たちのファッションは、当時の資料を元にかなり忠実に再現してあるらしいし、街並みなどのセットも同様。
 往年の西部劇は『米〜伊』問わず、その辺の描写はかなりいい加減だったらしい(後年『許されざる者』が公開されるまで、描写的に一番リアルな西部劇だったのが、この『ヤングガン』なのだろう)
 スタントなしの乗馬アクションも、これまたリアルな画面設計に一役買っているし(編集でごまかしたり、ヘタな合成をしなくても良いのだからね。現代アメリカ人の全てが乗馬できるワケじゃないのだ(笑) 銃の扱いも、これまた同様) 

 そして何よりも――
 この映画は、キャラクターの魅力が炸裂しているのである。

 エミリオ・エステベス演じるビリー・ザ・キッドは、これ以上ないってくらいハマリ役だし――
 知的で繊細なドク。
 虐殺されたインディオ唯一の生き残り、チャベス。
 気弱な拳闘家チャーリー(どーでもいいが、何故映画や小説に出てくるチャーリーという名の人物は、みんな気弱なんだ?(笑))
 主体性の無い毒舌家だが、実は漢気溢れるダーティ・スティーブ。
 ――もう全員、イイヤツなんですよ(笑)
 そりゃ妙に解りやすい馴れ合いなんかは、コレッぽっちもないんだけどさ(つーか、かなーり険悪な雰囲気が中盤まで続く)
 それでも少しずつお互いを認め合い、『一蓮托生』『呉越同舟』的な状況の中で、本当に信頼しあえる仲間となっていく……
 そんな一昔流行った、王道な青春ドラマのカタルシスが、西部劇とはいえ確かに存在するのだ。
 クライマックスの『リンカンの戦い』におけるスティーブの死に様を見よ!(マジ、泣けるっす……レギュレイターズ!!)

 この『ヤングガン』――簡単に言えば、あぶれ者のチンピラたちが世話になった恩人の仇を討つため、街を牛耳る巨大マフィアと敵対していくだけのお話である。
   ただ彼らにとっての不幸は、その報復の手段が『銃』による実力行使しかなかった点だろう。
 いくら『正義』が彼らにあったとしても、社会の枠組みを無視して行動していては、やはり堅実な未来はやってこない。
 いかに保安官や知事・判事が汚職にまみれていようとも、である。
 しかしこの映画は、そんな若者たちの逃れようの無い破滅までは描こうとしない。
 何故なら今作は――

 自分たちを取り巻くどーしようもない閉塞感に大きな風穴を開けた、その刹那を描くための物語なのだから。

 だからこそ、この『ヤングガン』はいい。
 そして来るべき破滅への物語は、続編にて描かれる事になる。
 ――この続きは、来月DVD『ヤングガン2』を購入してからだな(笑)  

2003年5月9日(金) 



Yeah、チャーリー!
Great scene select


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