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スパイダーマン (2002年)

- 摩天楼の蜘蛛 -

 先日『スパイダーマン』を観た!

 いや、期待に違わぬ傑作だったよ〜!
 お話も良ければ、キャラの描き方も良い。
 テーマもしっかりと硬派なヤツがあるしね。

 「大きな『力』を持つものは、それ相応の責任(義務、だったっけか?)を持たなければならない」
 ――とは、ピーターの叔父の台詞なのだが、結局この一文が今作におけるテーマの全てといっても良いだろう。
 いかにもアメリカ的なテーマではあるな(苦笑)――星条旗に佇むラストショットといい、ね。

 ピーターは『その責任』をある場面において放棄したため、叔父を失う事になるワケだし…
 『力』を本能の趣くままに行使するグリーン・ゴブリンとは、必然的に敵対の構図で描かれていく事になる。
 もっとも、ゴブリンたるノーマン・オズボーンは、所謂二重人格として描かれており、そう単純な『ワル』というワケではない(強大な力を得た為に、理性が欲望に敗北する――というある種お定まりの悲劇) 
 しかもこのノーマンというキャラ、『ピーターの父親』という側面も持っており(加えて『未来のピーター』でもあり、『もう一人のピーター』でもある)、ウィリアム・デフォーの演技もあって、かなり味わい深いキャラになっていると言えよう。

 結局ノーマン(ゴブリン)はこの映画で果ててしまったワケだが、残された二人の息子たち(勿論、ピーターと実子ハリー)が、以降どのような物語を紡いでいくのか?――映画のラストで大きな余韻を加えていたりする。
 そうだなぁ……敢えてこの映画に不満を言うとすれば――

 ヒロインの配役を、もう少し何とかして欲しかった(笑)
 ラスト・シーンがかなり良く出来ているだけに、実に惜しい!

 さて、次に語りたいのは(早いな)
 今作でVFXを担当しているジョン・ダイクストラについてだ!

 この方、言わずと知れた『スターウォーズ・エピソード4』の特撮監督である。
 まぁ、人間的にはかなり問題があるヒトみたいだが(トラブルがなにかと多いらしく、冷や飯ばかり食っている印象がある)、しかしその映像センスは他のハリウッド系クリエイターと比べても頭一つ抜けていると言っても良いだろう。
 ――ってゆーか正真正銘の『天才』だと、個人的には思っております(笑)
 今でこそ当たり前になってしまった感がある、コンピューターを使ったカメラ制御(モーション・コントロールカメラ)だって、そも『発明』したのは、このジョン・ダイクストラだったりするのだし。
 このヒトの凄さは、そうだなぁ……『スターウォーズ・帝国の逆襲』以降、エピソード4を越えるインパクトを持ったSFXシーンがない事でお解かりいただけるかと。
 エピソード4冒頭の『反乱軍を追撃するスターデストロイヤー』といい、クライマックスの『デス・スター攻防戦』といい、いわゆる役者や“あるがままの情景”が登場しない『特撮シーン』で、非常に印象強い映画的な名場面を撮ってしまうんですもん。

 随分昔にスターウォーズのムックを読んだ事があるのですが、ダイクストラの絵コンテとインタビューは中学生の私にかなりのショックを与えてくれましたよ。
 とにかく『普通の撮り方』では納得できないヒトらしいのです。
 美学……とでも言えば良いのかな?
 映画自体は〜〜ですが(笑)、映像だけは凄かった『スペース・バンパイア』といい、使いまわしばかりだったとはいえ、実にカックイイスペース・ドッグ・ファイトをみせてくれた『宇宙空母ギャラクティカ』といい、海面がソニックブームで爆発する『ファイヤーフォックス』といい(そーいや、今は亡き淀長さんも絶賛していたなぁ)、マイナーなトコロでかなり良い仕事をしてらっしゃる(そもそも『ギャラクティカ』の撮影所を巡ってルーカスともめたのが、ケチのつき始めだとか(苦笑))
 そして、今作『スパイダーマン』だ。
 予告を観た段階で、ワクワクしちゃいましたもん!
 「ああ〜、間違いないよ。この画面はダイクストラだぁ〜」――ってね(笑)

 で、本編を観て……いやぁ、幸せでした。

 今回のVFX的な見せ場は、何はともあれ優雅に、そしてテンポよくビルの谷間を跳躍するスパイダーマンでしょうな。
 もうこの快感は、映像のドラッグでございますよ。

 ――と、この辺はシロウトさんでも判る部分(笑)

 ダイクストラ的なコダワリの映像ポイントでいえば、やはりグリーン・ゴブリンの駆る“グライダー”の噴射煙でしょう!
 こう、画面を縦横無尽にグライダーが駆け巡り、どす黒い爆煙が忌むべき“魔の軌跡”を大空に刻み込んでいく――
 う〜ん、いいよねぇ〜 ダイクストラ最高!

 というワケで私、DVDを買わせていただきます。
 やはりこれだけの映像美を表現できるクリエイターは、他にいないよ、うん。

 物量だけとれば、もっと金をかけた映画の方が豪華な仕上がりに出来るのだろう。
 しかしあの映像の『凄み』は、そう簡単に真似できるモンじゃないよ(この辺の感覚は、日本の樋口監督と通じるかも)
 正直言ってエピソード4より金をかけたはずの『帝国の逆襲』を観た時、そのあまりのショボさにすげぇガッカリしたもん。
 だもんで、リチャード・エドランドは私的には全く評価できないんです(つーか、以降のスターウォーズは、特撮的に全て×。 さて、今度のクローン攻撃はどうなることやら)
 昨今の映画で特撮を観ていくと、やはりつまんない映像が多いと思います。
 『インデペンデンス・デイ』とか『アルマゲドン』とか、巨額な制作費をかけているのは解るんですがねぇ……
 迫力があるのは認めますが、印象に残るVFXシーンとなると、トンと思い浮かばない。
 まぁ『そー言った分野』に強い監督さんの作品だと、結構素晴らしい映像を見せてくれるのですが(キャメロンとか、バートンとか、マトリックスの監督さんたちとか)

 近年においてダイクストラと同じクラスの仕事をしているクリエイターは、わたくしダグラス・トランブルぐらいしか知りませんもん(つーか、2001年といい、ブレードランナーといい、師匠でもあるトランブルの方が格上。最近ではトンと名前を聞かなくなったが……)
   書いてて、ナンか侘しくなってきた(苦笑)

 ま、何はともかく、『スパイダーマン』は実に楽しめました。

 早くDVD、発売されないかなぁ……

 これを契機に、アメコミヒーロー映画のソフトを揃えようかしらん。
 『Xメン』は持っているから、『スーパーマン2』に『バットマン1〜2』、後は『ザ・クロウ』ってところか?
 来年は『超人ハルク』を製作するみたしだし、これも期待していいのかなぁ?(テレビシリーズは、実に渋い傑作だったからな)

 仮面ライダーの映画を、これらのレベルで製作しないかなぁ……
 出来ない事はないと、思うのだがね、うん。


2002年8月7日(水) 



いやぁ、助けてぇ〜
Great scene select


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