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私立探偵 濱マイク (2002年)

- ハードボイルド・ブルー -

 永瀬正敏は、青臭いハードボイルドである。

 彼はいつ観ても、そんな風だ。
 『ションベンライダー』、『ミステリートレイン』、そして『濱マイク・シリーズ』――
 大人になりきれないガキンチョの、背伸びしたハードボイルド。
 『ハードボイルド』の意味性をキチンと考えれば、随分と矛盾したフレーズなのだがね(大人の男が童心を捨てきらないのとは、表現として明らかに違うのよ)

 この度、新たにテレビシリーズとして濱マイクが蘇ったワケなのだが(おそらくは『罠』の後日談か?)、既に懐かしき感慨さえあるマイクのスマートな佇まいを眺めていると、永瀬氏の表情がションベンライダーの頃から、何ら変わっていないのが解る(20年間の開きがあるにも関わらす、だ)
 ヤンチャで、無鉄砲で、それでいて妙に冷めた言動。
 己のスタイルには不自然なくらいに拘り、ダサイセンスを極端に嫌う。
 かといって、人当たりは悪くないし、情にも厚い。
 そして、どーみても『一人前』には見えない、チンピラ風情。
 実際、彼はよくドジを踏む。

 例えば今回のテレビシリーズを語るにおいて、良く引き合いに出されるのが松田優作の『探偵物語』である。
 確かにキャラの配置や舞台など、ディティールはかなり酷似している。
 ――が逆にいえば、それだけ、なんだなぁ。
 工藤ちゃんはマイクとは比べようもなく『大人』だったし、他の登場人物にしてもしかり。
 『探偵物語』の場合――、自己完結した人たちが、それぞれのスタンスをキマジメに守りながら、事件に、そして工藤探偵事務所に関わってくるのだ。
 だから例え依頼人やその関係者が、事件を契機に死に逝く事になったとしても、傍観者たる工藤ちゃんは冷めた表情で目を細めながら、煙草を燻らせる事しか出来ないのよ。
 しかも最終回においては、工藤ちゃん自身も『それらの人たち』と何ら変わりがないって事で、物語にケリをつけてしまった。
 つまり『探偵物語』という作品は、例えコメディタッチとはいえ、立派にハードボイルドしていたのだ。
 それに対して『私立探偵濱マイク』はどうよ?
 ナンとも青臭い、登場人物にストーリーですこと!(笑)
 2話の唄えなくなった歌姫といい(UAが、流石の存在感!)、3話の自分探しのコギャルといい、いかにも『今風』な物語なのだな。
 ま、これがリアルと言えば、そうなのかもしれないが。

 ただね、一見頼りないガキにしか見えない濱マイクも、そんな連中にとっては、極上のヒーローだったりするんだな。
 癒し……とでも言えるのか?(嫌な言い方だが)
 秘書のねーちゃんといい、妹君といい、街の仲間といい、明らかに濱マイクという浮世離れした男に、精神的に依存しているフシがある。
 仕事の依頼も、まさにそんな感じの「酷く抽象的」なものバッカ。
 しかもまともに報酬を貰ってなさそうだし(だもんだから、マイクの生計がどーなっているのか、非常に気になるトコロだ(苦笑))
 まだ3話までしか観ていないのだが、このテレビシリーズ――映画3部作とは、全く違う狙いがあるのは明らかだ。
 正直言って、各話のクオリティは高いし、
 こんな日記を書いてはいるが、メチャクチャ楽しんでいるのは事実だし。
 永瀬正敏という役者も、実は好きだったりするし(笑)

 青臭いお話って、オレ大好きだしぃ。
   

2002年7月19日(金) 





- 罠に嵌りて -

 今週の『濱マイク』――なんか、観ていて頭ん中がゴチャゴチャしてきた。

 間違いなく、明らかに、映画第三作『罠』の続編なのだがね。
 その、何て言うのかな……きっちりした続編というワケじゃないのだ。

 ナンちゃんが演じる『星野くん』は、『罠』において間違いなく死んでおり、『もう一人の濱マイク』も確か死んでいたはず(しかも永瀬正敏の2役だった)

 が、昨日観たテレビシリーズにおいて、星野くんはどうやら堅気に戻って生活しているらしく、もう一人の濱マイクも窪塚洋介が演じる『別人』として描かれているのだ。
 まるで『罠』という映画そのものを否定するがごとく……
 しかしテレビの内容的には、明らかに『罠』と同様のテーマを語っているようにも思える。
 パラレルワールドというワケでも無さそうだし、星野くんの描き方などは明らかに「一度マイクと別れた後」の描き方だからな。
 つまり作品世界の、時間軸は繋がっている。

 ――ということはだ。
 『罠』という映画の解釈に、問題は移行していく事になる。

 もう一人の濱マイクという設定は、明らかに『ジキルとハイド』に代表される『二重人格モノ』の設定であり表現であろう。
 ならばあの『罠』という映画、表現として、そのまま受け取ってはいけなかったのかも知れない。
 『何かしらの事件』を素材に、心象表現から映像を組み立てていった……
 そう考えれば、星野くんの死も、もう一人の濱マイクも、その事象を納得させる事が出来る。
 う〜む
 でも、それはそれで釈然としないなぁ。
 考えようによっては、今回のテレビが『罠』のリメイクとも受け止められるし……

 …ダメだ。
 記憶が曖昧だな。
 もう一度『罠』を見直さなきゃ。

 ――と思ったら、ダビングビデオは例の火事で、ぱぁ。

 とほほ…

2002年7月30日(火) 


中村橋のおっちゃんねぇ……

唄わせてやれよ、唄わせてやってくれよ――
Great scene select


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