今度はオーストラリアだ。あそこなら、間違いない…

明日に向かって撃て!(1969年)

- アウトローたちの落日 -

 あの、忘れられぬアウトローの二人組み。

 銃やギャンブルの腕はからっきしだが、“キレ者”の壁の穴盗賊団ボス〜ブッチ・キャシディ。
 片や“学”はないが、西部に知れ渡る早撃ちの名手〜サンダンス・キッド。

 しかし仲の良かった(この場合は“つるんで”いた、か?)保安官は、二人に冷酷に言い放つ。

「お前たちは長生きしすぎたのさ」

 ――そんな、時代に乗り遅れたならず者たち。
 遂に彼らは西部を追われ、ボリビアに新天地を求める羽目になる。
 そこでサンダンスの彼女〜女教師エッタ・プレイスを巻き込み、三人で“荒稼ぎ”の毎日を始めるのだが……

 不幸の“白い麦わら帽”は、決して彼らを見失う事がなかった。

 慌てて堅気に戻ろうとするが、どう考えても既に手遅れ――。
 いつしかエッタは彼らを捨てて、一人西部へと帰っていく。

「貴方たちの死ぬところを、私は見たくないの……」

 大勢のボリビア警官隊に囲まれ、絶対絶命の二人。
 ブッチは血まみれになりながら、サンダンスに苦笑いと共に囁く。
「ボリビアは失敗だった。今度はオーストラリアだ。あそこなら、間違いない!」

 その刹那――
 二人は“明日に向かって”駆け出す。

 無数に並んだ銃口が、一斉に火を放つ真っ只中……

 そして、刻は永遠に凍りつく。

 ――――――――――――――――――――――
 ボクは、熊本交通センターの前にあった“センターシネマ”で、この二人組みと出会った。
 中学一年の時、だったと思う―― 季節は残念ながら憶えていない。

 西部劇はテレビで観ていて大好きだったし、ちょっと前に“遠すぎた橋”を観ていた縁でロバート・レッドフォードの名前が目に付いたにすぎない。
 勿論、入場料が安かったってのもある(確か2〜300円だったか?)

 ボクはこうして“この映画”に巡り合い、人生に余り無いだろう程の多大な感銘を受けてしまったのだ。
 筋書きだけを追うのならば、陰惨で救いの無い物語である。
 勿論そーいった映画やテレビドラマは、それこそ星の数ほど観てきた。
 ――しかしこの映画は、今までに経験した事のない世界をボクに垣間見せてくれたのだ。

 セピア色を基調にした、上品な画面。
 シャレて、気の利いた台詞回し。
 華麗に鳴り響く、バート・バカラックの音楽。
 “雨にぬれても”をバックに、ブッチとエッタが自転車を乗り回すシーン。
 「俺は泳げないんだ!」と叫ぶ、サンダンス・キッド。
 ……挙げ出したら、それこそキリがない。

 大袈裟に言えば――
 ボクにとっての“映画”の全てが、この作品には存在するのだ。
 常に追い求める“作品”として、
 人生の指針として、多大な影響を受けたと言っても良い。

 ルパン三世と次元大介はこの二人の“直系の子供たち”であり(サンダンス・ファンなボクは、当然のように“次元贔屓”である)、松本零士の描く美人ヒロインのルーツは絶対にエッタ・プレイスだよな〜。
 ――等といった、酷く“思いこみに近い”認識の仕方をする羽目になった、元凶の作品でもあるのだ(笑)

 で、そんな作品とDVDというメディアで、数年ぶりに再会したのである。
 この上ないスペシャルな“オマケ”と共にね
 まず何よりも嬉しかったのが、特典ポスターだ。
 日本語は一切使われておらず、なかなかイカしたレイアウトである。
 この映画のポスターが手に入るなんて、今まで思ってもいなかったからな。
 嬉しさの余り、早速部屋に貼ろうとしたのだが、いざ貼る段になって穴をあける事に躊躇してしまう。
 ――これも初めての事だ。
 ボクの性格を知っているヒトなら、これがかなり“特殊”な事態である事は察してくれるでしょ?(笑)

 それにどこに保管してあったのやら――
 当時のメイキングやインタビューなど、当にお宝映像のてんこ盛りである。
 今までにお目にかかったことのないシーンの数々に、私の目は釘付けとなって離れようとしない。
 本当に現実なのか?
 夢でもみているんじゃないのか?
 高校の頃、テレビの吹き買え版をビデオに録画し、擦り切れる程見直した日々。
 大学生になって、やっとレンタルビデオをダビングする事が出来たときの喜び。
 東京に出てきてサントラをWAVEで買い求め、当然のごとくLDソフトもゲットしたんだ。
 次いで神田の本屋でパンフレットを見つけ、狂喜しながら購入したその瞬間ときたら、アナタ――。

 そして今回の余りに贅沢な仕様の、DVD……

 ボクにとって、あまりにもスペシャルな映画。
 それがこの“明日に向かって撃て!”という、作品である。

 ――とか言いながらも、
   ジョージ・ロイ・ヒル、ニューマン、レッドフォードトリオの次回作、“スティング”も是非同様に“特別編”として発売してもらいたいなぁ……などとホザイてみたり(笑)
 しかしもう30年ちかく昔のフィルムなのに、今現在観直しても決して色褪せる事がない。

 やはり、名作なんだよなぁ。

 そういえば――、
 ブッチとサンダンスの二人が、最後の瞬間まで夢見ていたオーストラリア。

 あそこが実は当時の“流刑地”だと知ったのは、いつのことだったっけ――?

2001年9月26日(水) 



Fire! Fire! Fire!
Great scene select


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