美しく、しかも現実的な映像風景の中から、バットマンという特異な(変態的な、ともいう)キャラクターが産まれるという、奇妙な倒錯感。
酷いトラウマをもった主人公が、「父の遺志をついで」&「己の存在理由をかけて」〜蝙蝠の王となるプロセスを淡々と――しかも、圧倒的なリアリティとシニカリズムでもって描写していくのである。
既にこの時点で、この映画の大半の観客が潜在的に持っているであろう「バットマンを渇望する心」は、監督であるクリストファー・ノーランに見透かされているかのよう。
だって「バットマンになる事」とは、何万ドルもする軍用サバイバルスーツを着込み、蝙蝠状の耐ショックヘルメットを被り、電気によってグライダーに変形するケープを身にまとう事なのだ。
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