昴治!

無限のリヴァイアス(1999年)

- 私の大好きな相葉昴治 -


 “無限のリヴァイアス”の廉価版DVD-BOXを購入する。

 つか個人的にはこの作品にハマったお陰でネット環境を整えたようなモンなので、今回の再視聴は何とも感慨深いものがあります。
 つか、放映からもう10年か―― 今でこそこうやって自分のHPを持っていたりするが、当時はドリキャスでショボショボだったんだよねぇ……
 某有名サイトには結構な量の文章を書き込んでたりね、いじましくもドリキャス専用のキーボードまで購入してさ(笑)
 何か今頃になって当時のログを残せなかったのが、チョイ残念に思えてきたッス。

 さておき、リヴァイアスである。
 とりあえず今現在の自分が観ても、かなり面白いッス。
 少なくとも購入して2〜3日で全話視聴しちまうくらいには吸引力がある。
 独特の緊迫感が淀む事無く続いていく物語は、連続モノとしての“引き”がかなり強いし、何よりもキャラクター達が皆、ひどく魅力的なんである。

 まずはやはり主人公の“相葉昴治”だろう。
 この人なくしてリヴァイアスという作品は語れないし、実際他の日本製TVアニメで彼の様なタイプの主人公には寡聞にしてお目にかかった事が無い。

 何がスゴイって、この人―― トコトン無能なのである。
 いや、正確には限りなく凡庸な能力の持ち主なのだが、物語に“技量的な関与”が全く出来ていないという点において「この手のお話の主人公としては、極めて無能」と断じざるを得ないのだ。
 主役ロボ(ヴァイタル・ガーダー)の操縦も出来なければ、ソリッドのプログラミングも出来ない。
 ケンカも弱ければ、ここぞという場面で強いリーダーシップも取れない。
 中盤以降はむしろリンチばかり受けており、常に生傷の絶えないボロボロな印象しかなかったりする。
 ――こんなんで、宇宙SFサバイバルロボットアニメの主人公を名実供に張っているのだからね。

 じゃ、何が彼を主人公たらしめていたのか?

 ――これはもうひとえに“尋常ならざる意志力”を持っている、という点につきる。
 とにかく自分を曲げない。
 自分の正しいと思った事に対して一切の妥協をしない。
 やりたい事を、やりたいようにしていたい。

 これらはヘタに描くと我が儘・頑固・偏屈な社会不適合者になってしまうのだが(余談だが、他の谷口悟朗作品では実際にそういう風に見える主人公たちが存在する)、この昴治の場合は何ていうか、微妙にバランスがとれているんだよね。
 ――不器用に我を通しすぎて、結局は自分自身がズタボロになっているからかもしれんけど(笑)
 とりあえずその頑固な本人の志向性ってヤツが「個人の尊重〜周囲との協調」にあるもんだから、ある種の共感を持てるようになっているのだな。

 ぶっちゃけ皆とヌルく楽しくやっていく事こそ、昴治が最も切望する生活環境なんである。
 まぁこういうフツーな正論に異を唱える人は、平穏な日常ならば、まずそうはいまい。
 ただ昴治の凄まじいところは、皆が生き残れるかどうかの非常時においてさえも、コレを貫き通そうとしたところなのである。
 そこに妥協や諦観は決してしない。
 しかもリヴァイアス艦内の殺伐とした空気を読んでない……というより、空気を読んだ上であえてやっているのだからね。
 もっともそんな昴治の行動原理もファイナに言わせれば「自分が傷つくのが怖いから」という事らしいが、それはあくまで物語序盤の彼である。
 覚悟を決めた終盤の昴治は、心身ともに傷だらけとなり実際に死にそうになりながらも、最後まで自らの求める「艦内システム」を諦めなかったのだ。

 クライマックスにおいて「オレは今、笑いたいんだ」と、文字通り命をかけて自らの気持ちを尾瀬イクミに押し付ける昴治は、まぁかなりの迫力がある(笑)
 あーいう先の見えない絶望的な状況じゃイクミの様にテンパっちゃう方が自然だし、ある意味ラクだもん。
 エアーズ・ブルーの昴治評でもある「こんな状況で普通でいられるお前は、どう見ても普通じゃない」というのがヒジョーに納得できる名場面だ。

 その強固な意志力に加えて、実は昴治には表層的に(他のキャラには)解りにくい、もう一つ突出した才覚があったのも見逃せない。
 いわゆる「状況に対する極めて冷静な判断力」というヤツで、成績や身体能力には具体的に現れないため、周囲に気づかれ難い才能とも言えよう(ブルーはいち早く見抜いていた節があるけど)
 序盤においても、昴治ってベストは提示できなくても「限りなくベター」なら提示できたんだよね。
 少なくとも「絶対にやっちゃいけない事」ってのが解っていたのは、おそらくレギュラーキャラの中でも彼だけである。
 ま、皆を納得させるだけの器量が、当時の昴治になかったのも事実だけどな。

 やがてカレン・ルシオラの助言もあり、後半の展開において、それまでは欠けていた実行力を伴い始めた相葉昴治は、ただの凡人からある種のフィクショナルなスーパーマンへ成長したとも言える。
 最終的には“物語を俯瞰する者”(ネーヤ=リヴァイアスそのもの)すらも、精神的な同調と供に、直接的な彼のバックアップへと回るのである。
 ――こうなってくると、まさに主人公の面目躍如だ。

 そして個人的には、この辺がリヴァイアスという作品における最大のカタルシスなんだよねぇ……
 そんなワケで、リヴァイアスの終盤は静かに燃えまくりって感じで、もう最高ッス(笑)

 昴治の他にも、開き直って凛々しさすら感じさせるルクスンやら、昴治の行動の影で疾走するブルーやらで、何度観なおしても飽きませんよ。
 ――つか中盤以降ずっと抑圧されていたキャラたちによる弾けたフリーダムな行動は、やはり観ていて気持ちの良いものです。

 対して貧乏くじを引いた感の強いイクミや祐希には、同情こそすれ、あまり感情移入できなかったなぁ……イクミに関しては、序盤からあまり好きになれなかったし。
 辛い過去があったとはいえ、あの人の死に対する過剰な反応が、どーも男のヒステリーに見えてね。
 感情表現をある程度コントロール出来ないヤツって、基本的に苦手なんであります。
 こちとらが大人だからそう思うのかもしれんが、イクミの隣にいる昴治の反応は凄く理解できたりするからの。

 〜とまぁ、思わずこうやって観ている自分と劇中キャラを照らし合わせてしまうところが、この“無限のリヴァイアス”という作品の素晴らしさなのかなぁと……いや、ほんとマジでさ。

 つまり視聴する人それぞれの受け皿が用意されているような奥深さが、このお話にはあると思うのよ。
 オレとは違って、イクミや祐希に心底同調して観るヒトもいるだろうし、理屈っぽいヘイガーに共感を覚えるヒトだっているだろう。

 あの異様に大勢のレギュラーキャラを顧みれば、ソレが初めから意図的に成されているという事がハッキリと読み取れるし、そこそこ尺の取れる2クールシリーズだからこそ、こういう相対化された群像劇も可能だったのだろう(逆に4クール構成だと間延びして、あのピリピリとした緊張感が維持できたどうか)
 そうそう、女性陣もこれまた魅力的で、特に蓬仙あおい嬢は長所短所込みで大好きなんでございます(笑)
 小さく自己完結しているところといい、
 ヌルめの言動といい、
 怒っても嫌味がない物腰といい、
 自己認識の甘さといい、
 近眼で目を細めて昴治に顔を近づける癖といい、
 しょせん絵に描いた人物なのに、妙に柔らかそうにみえるシルエットといい(なんじゃ、そりゃ)、
 ロングよりやはりショートの方が良いなぁと思いつつも、この作品以降の桑島法子さんは個人的に最強なのであるっ!(支離滅裂なのは自覚しておりますです、はい)
 すげ怖でサイコな宗教女とはいえ、ファイナだって嫌いじゃないぞ。
 カレンとか、祐希には勿体無いくらいに良い女だと思うし。
 ネーヤのあまりにピュアな眼差しと喋り方は、非人類とはいえマジ萌え以外の何モノでもなかろうて(今更ながらにフィギュアとか欲しいぞ)

 あ、和泉こずえは序盤も終盤も、どうでも良いです、ハイ。
 理由は、今までの文章から察してくださいな。


 ――等と、ひどく個人的なキャラ談議が落ち着いたところで(笑)、ちょっとばかし「SFアニメとしての“無限のリヴァイアス”」についてをば。

   

 とりあえず“プラネテス”や“ムーンライトマイル”が登場する以前のアニメ作品としては、このリヴァイアスが最もリアルっぽい宇宙の描写をしていたんじゃなかろうか?

 巨大航宙艦から小型作業艇まで、主人公たちの操船プロセスは極めてリアルな手順を踏んで見せるし、内圧外圧、艦内の重力事情、火星衛星軌道上における一撃離脱な宇宙戦闘など等、各ディティールの懲り方は正直凄まじいものがある。

 初めてヴァイタルガーダーを見た時に思わず笑い転げてしまう昴治たちの描写など、まさにアニメでソコを突っ込むか?――ってな感じではあるが、その突き詰めたリアリティが、逆にヴァイアやヴァイア艦〜ゲドゥルトといった存在の異常性を際立たせているのも、また事実である。
 そしてそういったリアルで、また相反するように破天荒なディティールが、宇宙で孤立していく少年少女たちのドラマに厳しすぎる現実感と痛みを与えていくのだ(最終決戦における気が狂わんばかりのヘイガーの混乱ぶりが、まさしくそれを象徴している)
 ホントによく出来てますな。

 加えて、最終話で昴治が再会したイクミに語る「掴むのは未来じゃなくて、明日でいい」という小せぇ台詞(笑)が、エンディングクレジットで壮大に描かれる「ヴァイア艦による惑星規模の太陽系脱出」へと繋がっていくあたりも、そのサブタイトルを含め、実に綺麗にまとめてきたなぁと。


 「了解、艦長」と応えるネーヤの瞳に映っている彼らの未来は、しみったれながらも、きっと素晴らしいものに違いあるまいよ。



                                           
2009年12月8日(火)

 


オカエリナサイ、アイバコウジ
Great scene select




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