ブラックサレナ 〜ユージンSRシリーズ・機動戦艦ナデシコPart.2
機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness- より

- 復讐は黒百合の花言葉 -

 結局、ブラックサレナはまともなアイテムがリリースされなかったなぁ……
 ルリちゃんとか、いまだ定期的にフィギュアが発売されているのにね。
 プラモもエステバリスしかなかったし……

 確かにこのサレナ、どー見てもヒーローメカのソレじゃないからな(笑)
 どっちかっていうとジオン系なゴツいラインだし、漆黒に緋色のペイントが施されたボディは、実にストレートなアンチジャスティス。
 メーカーさんが「売れない」と判断するのもワカランではない。

 しかしオレは大好きなんだよね、このメカ。
 そもそも“劇場版ナデシコ”自体にすごく思い入れがあるし、劇中におけるサレナの表現もメチャカッコイイのだ。

 ヘビィな見た目とは裏腹にアクションはひたすらシャープ&スピーディーだし、武装もシンプルに二丁拳銃(ハンドカノン)のみ。
 後はディストーション・フィールドでの体当たり、ってのも、なかなかにワイルド。
 変形機構も、高機動ユニットを一度パージしてしまうとその場では元に戻れないあたり、何とも“わかっている”カンジだ。

 何よりもTV版で活躍した“アキト専用エステバリス”を強化してあるってのが、その「黒百合」というネーミングも含めて、実に絶妙なんである。
 黒百合の花言葉は「呪い」と「恋」――
 まさにこの漆黒の機体は、愛する妻の奪還に暗く燃え上がるリベンジャーの体現。

 そして心弱き青年が己が復讐の為にひたすら力を追い求めた結果、スラスターと装甲を過剰に追加しまくって、あーいった素顔(アキト専用エステバリス)すらわからなくなる程の“分厚い鉄の皮”を被ってしまうのである。
 劇中で北辰が語るが如く、まさに熾烈なる復讐者〜テンカワ・アキトの分身が、このブラックサレナなのだ。

 そう捉えていくと、様々な表現が見えてくる。

 例えば、サレナのマニュピレーターがテールバインダー(尻尾)にあるという事。
 つまりハナっから両腕にはハンドカノン(武器)以外のモノは持たない、という意思表示でもあるのだ(逆から意味をとれば「アキトはもう二度と包丁を持つことは無い」という事でもある)

 しかも何とクライマックスでは、装甲の剥げ落ちた素顔のエステバリスが五感を失ったアキトの代わりに、オイルの涙で泣いてみせるのである。

 ――やっぱイイっす、佐藤竜雄監督の演出は。
 典型的なスーパーロボットのカッコよさでもなければ、ボトムズに代表されるリアルロボット的な魅力でもない……
 メカニックの質感と外連味の両方を兼ねそなえる、1つの表現としてのロボット。
 もしかしたら佐藤監督は、富野由悠季的ロボット描写を継ぎうる、現状唯一のアニメ作家なのかもしれないね。
 ――つか、そうあって欲しい!(笑)

 う〜む、何かナデシコの作品評論から佐藤監督論になっちまってるな。
 一番上に書いたようにサレナには碌なアイテムがないので、とりあえず今回はガシャポンを引っ張り出して加工してみた次第。
 随分昔の小さなアイテムにしては、それなりに出来が良いッス。

 とはいえ、スパロボやACEにも出てるみたいだし、やっぱキチンとしたフィギュアで出して欲しいなぁ。
 1万円以内なら買いまっせ!




2006年9月13日(水) 



   

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