元祖007なら、間違いない

カジノロワイヤル (1967年)

- カジノロワイヤルのマジメな話 -

「2枚買って1枚分のプライス」なDVDを、いじましく(笑)友人と一緒に1枚づつ購入。
タイトルは以前から欲しかった“カジノロワイヤル”(しっかし、古い映画ばっかり買ってるね)

ビデオレンタルで観たのを最後に、ここ十何年も観ていなかった映画なので、かなり新鮮な気持ちで観れたのだがね。
しかし、やっぱ、なんちゅーか、すげぇオモシロイ!
この映画に関しては、ホントどこのレビューを読んでも圧倒的に不評が多いのだ。
だもんだから正直言って、昔観た時に面白いと感じた自分への自信が、かな〜り揺らいでいたのよねぇ。
だが、オレはやはり間違っていなかった!

とはいえ、観る人をヒジョーに選ぶ映画だってのも、これまた事実である(笑)

まず、表層的に“マジメ”なつくりの映画ではないのだ。
物語からキャラクターまで、全てがパロディであり、コメディなんである。
そもそも007〜ジェームス・ボンドがオリジナルを含め、この映画では都合7人も登場するのだ(うち女性が3人)
もう、この時点でマジメに物語を追うのが空しくなってくる(笑)

当面の敵は犯罪情報組織“スメルシュ”であり、その“スパイ撲滅作戦”に対する反攻である。
そこで白羽の矢がたったのが、既に引退したオリジナル007(デビッド・ニーブン)だ。
しかし既に老境に入ったボンドは、自分の代行を務める新たな007たちをスカウトするのだった――
といったイントロなのだが、この映画――オバカに見えて、実はそれなりにストーリー性は高いのだ。
ま、いわゆるスパイ物だからね、裏切り裏切られの情報戦が見ものなんだし、クライマックスにおける謎の解明も含めて、プロットがしっかりしてなきゃ映画自体が成り立たないのである。
しかし上記したキャラ設定とギャグ的な展開描写の為に、観ているほうがフツーに混乱をきたしてしまい、何気に難解な映画になっちまっているんだよね。
しかも時代性の強いパロディなぞは、今現在の視聴者には理解不能な部分が多いだろうし(白状すれば、ワタクシにもよーわからん表現が多々あります)
そうなんだよなぁ……コレって典型的な英国流ブラック・コメディなんだよ。
風刺性は異様に強いしさ。

例えば、劇中で登場する“国際家政婦協会”なる組織――どー考えても“フェミニズム”とは対極にあるだろ(笑)
ま、本家“007”(ドクターノォ以降のシリーズ)に対するブラックパロディの一つなんだろうが、どういう理由があるにせよ、結果的にその“家政婦たち”がお色気を振り撒きながら画面の端々に登場するのだからね(笑)
ウーマンリヴが殊更声高に吹き荒れたあの時代に、敢えてこういった作品を撮るのだからさ、マジすげぇよな。
しかもオリジナル007(デビッド・ニーブン)にゾッコンになったレディたちは、何故かみんな修道院に入るらしいし(オリジナル007って、実は世間のイメージとは正反対のフェミニストだったりするのだが)
しかしそういった女性軽視の表現の中でスパイスを効かせているのが、スメルシュのルシッフル(オーソン・ウェルズ)にバカラで勝負を挑む“新007”(ピーター・セラーズ)と、その協力者として暗躍する“女007”(ウルスラ・アンドレス)のお二方である。
“女”を女として実直に描く事によって、逆に“女の可愛さと残酷さ”の両面を、ヒジョーにストレートに描き出しているのだな。
ぶっちゃけて書けば、ウルスラ007はモロに“峰不二子”タイプなんである(コレと“黄金の七人”のヒロインをミックスさせたら、正真正銘の不二子が出来上がるな)
で、セラーズ007は敵との勝負には勝ちながらも、傍らの女にいともあっさりと裏切られてしまうのだ。
ピーター・セラーズ007が、本家ショーン・コネリー007のネガティブな姿であるのは、間違いなかろうて。
しかし、このセラーズ007の最後は、それなりに感慨深いものがあるんですよ……エンディング・クレジットも含めてさ(このページのTOP画)
そして、この映画における男女のデフォルメされた表現のもう一つが、ウッディ・アレン演じる――
と、書こうと思ったが、この辺は映画の肝なんで、古い作品とはいえネタバレはナシにします。
男なら誰でも少なからず持っているだろう“性的コンプレックス”の発露、が今作の最終的なテーマとなって行くのです。
いかにも“らしい”役柄ですな、ウッディ・アレン(笑)

とまぁ、小難しい事を書いてきましたがこのカジノロワイヤル、な〜んも考えずにニヤニヤしながら観るのが一番だとも思いますんで。
バカラックの音楽はノリノリで素ん晴らしいし、美術は当時流にサイケデリックでとってもステキ。
役者もまさにオールスターって感じで、映画全体にこの上ない“リッチ感”があるのな(ありすぎで、たまにゲップも出るがな〜(苦笑))

少なくとも、近年のオースティン・パワーズよりは面白いし、刺激的な映画だよ。

決して普通に「映画ファンは必見」とは言えないが、ね(笑)

2005年7月24日(月)  



HOME