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マッドマックス (1979年)

- 砂塵の復讐劇 -

先日、この日記にも書いたマッドマックス1がamazonより届いたんで、さっそく腰をすえて鑑賞する。

 確かに、この映画も“2”とは違う意味で面白い。
 カーアクションも全編、一種独特の緊張感が迸っているし――
 物語もシンプルに、燃え〜な展開となっているもんな(いわゆる“チャールズ・ブロンソン”タイプの復讐劇として、よく出来ているんス)

 ただ良くも悪くも、全編に漂うB級臭さは否定できず。
 特にマッドマックス2を観た直後だと、余計にソレを感じてしまうのよ。
 ――とはいえ、単純に予算がかかってないからそう観える、というわけでも無いのだな。
 これは演出上の問題なのだ。
 じつは今回この映画を観直して、個人的に新たに判った事がある。

 ぶっちゃけて言えば、このマッドマックス1――
 表現方法が、ほとんどホラー映画なんである。
 いや、別に画面上でグロいシーンが頻発するから、ってワケじゃないス(笑)
 観客をハラハラさせるテクニックっていうか、演出全般がホラー〜ショッカーの定石をしっかり踏襲してるんですな。

 例えば、暴走族に殺されるマックスの相棒〜グースの、一連の展開を挙げてみますと……

 まず、とある部屋でグースが女とイチャついて(笑)いるわけです。
 で、外では暴走族の一人が、彼のバイクに“細工”をしている、と。
 やがて夜が明け、グースはいつも通りバイクに乗って本部への出勤である。
 もちろん“細工”の事を何も知らないグースは、ハイウェイを飛ばしまくるわけですな。
 当然、観客は先の展開がある程度読めてしまい、この時点でハラハラしっぱなしなワケで。
  で、こちらのそんな心配も露知らず(笑)グースは順調にシフトアップしていき、次第にバイクのスピードが映像的にもヤバイくらいになってくるのだな(けっこう長い尺で、ジックリと見せるからな〜)
 「この状態でバイクがこけたらグース、間違いなく死ぬな」――などと、観ている誰もが思い始めた矢先、案の定バイクの後輪が突然ロックし、グースの体は前方へと豪快に弾き飛ばされてしまう。
 「あ〜あ、死んだな、こりゃ」
 が、しかし運が良い事にグースの体は麦畑(?)に突っ込んでしまい、そこがクッションになったせいか――しばらく逡巡した後、ケロっとした表情で立ち上がるのだ。
 当然、この時点で観客はかなりホっとすることになる。
 「でも、もしここに暴走族連中が襲いかかってきたら――グースも“ただのマシントラブル”だと思ってるみたいだし……」
 しかし、まだ神はグースを見放していなかった。
 一台の軽トラがたまたまそこを通りかかるのである。
 グースはコレ幸いとその軽トラを“徴集”し、荷台にクラッシュしたバイクを載せて本部に向かうのだった。
 「おー、これなら大丈夫かな。良かったね……」
 しかし安心したのも束の間――妙に能天気な鼻歌なぞをかましながら運転するグースに、再び不安が立ち込めてくるのであった……
 案の定――暴走族が2人、グースの乗る軽トラを待ち構えており――
 「あちゃー、やっぱり……」
 ――と、まぁこんな感じで、観ているこちら側の思惑をハズすハズす(笑)
 緊張させておいて、一度安心させて、また緊張させ「キター!」ってな、展開である。
 これって、紛う方なくホラー映画の定石ざんしょ。
 マックスの奥さんが暴走族に襲われる件も、こんなカンジだし……というか、全編こういったハラハラ感で満載なのである。

 ――で、こういった演出方法のせいで、マッドマックス1は映画の仕上がり自体が、非常にB級臭くなっているのだな。
 対してマッドマックス2の方は、こういった手法を殆ど使用していない――というか“2”の演出は純粋なアクション性でハラハラ感を醸し出すことに専念しており、作品の方向性がこの“1”とはまるで違うのである。
 そういった意味で捉えればこの“マッドマックス1”は、スピルバーグの『激突』に近いのかもね(エンターティメントの方向性として)
 勿論――だからといって“そのB級臭さ”が嫌いなワケじゃないよ。
 これはこれで面白いと思うし、そもそもこういった“見世物小屋的”な楽しさ満歳のB級映画は大好きだしな(もっとも同じB級でも、ジョン・カーペンター作品のような“奥の深さ”を感じさせる作品も存在するんだけどね)

 ホント、良い映画って観るたんびに新たな発見があるもんだねぇ〜
 こちらの知識や経験値が増えてきた、ってのもあると思うが(単に、当時の感想を忘れてるだけだったりして(笑))

 しかしそれにしても何故『サンダードーム』はあんなにつまらなかったんだろ?
 とてもこのマッドマックス1〜2と同じ監督が撮った映画とは思えん。

 いや、まて。
 もしかしたらもう一度観直すと、実は面白いのかも―― なんてね(笑)

 多分それはナイだろ、あの映画に限ってさ。

2004年5月4日(水) 





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