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マッドマックス2 (1981年)

- 野卑なる世界 -

 先日amazonで6月発売の『夕陽のガンマン・アルティメット』を予約する“ついで”に、数アイテムを衝動買い。

 で、その内訳――
 2枚買って1枚分(¥2500)キャンペーンにつられ、以前から欲しかったマッドマックス1〜2のDVD。
 ブライアン・メイのサウンドがメチャカックイイ、そのマッドマックス2のサントラ。
 最後にANIMEX1200という廉価版アニメサントラシリーズのサイボーグ009超銀河伝説(初CD化)
 ――締めて¥5000とちょっとなり。
 これだけの買い物をしたわりには、かな〜りお得なカンジ……等と、衝動買いを自分の中で正当化してみたり(笑)
 で、早速届いたマッドマックス2のDVDを鑑賞。
 というのも、1作目は在庫がなかったらしく、数日後に発送との事。
 ま、順番に観なくても全然問題ないのが、このシリーズの凄いトコロだ(笑)

 いやはや、ヘタすりゃ20数年ぶりに観た事になるのだが、思いのほか出来が良くてチョットびっくり。
 カーアクションの凄まじさは、今観ても充分すぎるほど迫力があるし(つか、未だこのシリーズを越えたカーアクションは存在せんだろ、ハッキリ言って)
 そのセンセーショナルな未来世界像は、産み出した幾多の亜流映画など足元にも及ばないくらいに、ハードで説得力がある。
 ――もっともこういった賛辞は、このシリーズを知っている映画ファンからすれば“言わずもがな”だよな(笑)

 いやね、今回観直して特に驚いたのは“脚本の良さ”なんである――意外な事に。
 確かに荒筋だけ辿れば、ヒジョーにシンプルなお話だ。
 ガソリンを巡って対立する地域住民と極悪暴走族――
 そこにフラリとやってきた流れ者のアウトローたち(マックスとジャイロキャプテン)が、七人の侍よろしく弱者でもある住民側の用心棒になるのだな(もっともマックス本人にそのつもりは全く無さそうだが)
 やがてマックスが大型トレーラー(タンクローリー牽引可能)の回収に成功。
 それを契機に、住民たちは夢と命を賭けた脱出行を開始するのだった……

 こうやって書くと、ホントどうって事なさそうなんだがね。
 全編に渡って、何気に描写が細かいのよ。
 例えばインターセプターのV8ターボチャージャーである。
 冒頭、マックスの駆るインターセプターは、暴走族の一団に強襲される。
 マックスはぶっちぎる為にターボチャージャーを起動するも、エンプティランプが点滅――つまりは、ガス欠になってしまう。
 するとそれまでは平然と助手席に座っていた犬が、怯えるように後部座席でうずくまるのだな。
 勿論、その場はマックスの機転で窮地を脱するのだがね……この一連の演出でわかるのは、「ターボチャージャーを起動させたら、何人たりともインタセプターを追尾する事は不可能」であり、“犬”ですらそういった認識をしているらしい、という事なのだな。
 ――はい、その通りです(笑)
 この場面があるからこそ、中盤の無謀な敵包囲網突破を試みるマックスの心情が、シンプルに理解できるんですな。
 ガソリン満タンのインターセプターについて来れるマシンなど、この荒廃した世界にはもはや存在しない、と(その裏づけにもなる台詞を、とある脇キャラが吐いたりするし)

 しかし残念無念。
 敵ボス・ヒューマンガスのマシンは、驚くべきことにインタセプターを凌駕していたのだ……何とも“原始的”なシステムで、少なくとも直線走行においてはね。

 ――とまぁ、こういったカンジで台詞が無くても、様々な心情や状況・世界観が垣間見えてくるのだ。
 まぁ主人公があまりに寡黙だもんだから、余計に映像表現が大きなウェイトを占めているんだろうけど。
 他にも……
 オルゴール、蛇、インタセプターの時限爆弾、ショットガンと弾、手錠、トレーラー、双眼鏡、ブーメラン、等など――

 とにかくこれら小道具の見せ方が実に巧みで、単発ではなく幾度と無く画面に登場させることで、話に奥行きと説得力、加えて独特のユーモアを与えているのだな(これら小道具が劇中でどういった使われ方をするのか、ここでは書かないでおこう。憶えているヒトは思い出してニンマリとしてくれ(笑))

   勿論この映画、小手先の演出が良いだけじゃないよ。

 やはり特筆すべきは、魅力的なキャラクター描写だろう。
 あまり見せ場の無い脇役に至るまで、かなり丁寧に描かれているのが良い。
 登場に意味があるっていうか……つまり、物語上できちんとキャラが立っているのだな。
 ま、ジェイソンマスクのヒューマンガスやら、モヒカンホモのウェズやら、指を飛ばされたインテリ風メガネ(実はかなりバカ)やら、変態オールスターズな暴走族連中は取りあえず置いとくとして(笑)

   基本的には善人で、むしろ義を重んじる“漢”なのだが、何故か観ていてムカついてくる(笑)リーダーのパッパガーロ(ぶん殴るマックスの気持ちが良くわかるッス)
 普段は男勝りでハードな佇まいを見せるが、死ぬ間際は妙に女臭い(あの長いブロンドのせいか?)名無しの美人アーチャー。
 ジャイロキャプテンと一緒に採掘場を逃げ出そうとするも、仲間との絆を断ち切れずに皆と行動を共にする、けっこうカワイイ(よーな気がする)名無しのおねぇちゃん。  物を作り修理する側の人間だからか、破壊するモノを忌み嫌う、両足が不自由なメカニックマン。

 そしてやはり、ジャイロコプターで颯爽と活躍する“ジャイロ・キャプテン”を挙げずにはなるまいて。
 一見、物語の脇でドタバタしている道化であり、また狂言回しである。
 しかしそういったチンケな小悪党でありながらも、この廃れた世界で常に文明人たろうとする姿勢を忘れない――いわゆるナイスガイでもある。
 ドッグフードのエピソードは非常に滑稽でありながらも、彼の“スタイル(生き方)”を観客に印象付ける大事なシーンだ。
 ある意味、“インテリ”と言えるのかも。
 じゃないとジャイロコプターなんてメンテの大変そうなビークルには乗らないだろうし、ガソリン強奪の為の蛇を使った巧妙な罠も思いつくことはあるまいて(多分このジャイロキャプテンと“指飛ばされ眼鏡”は、作劇上の“対”になってるんだろうなぁ)
 とにかく、このキャラは語るべき点が多い。
 他にも――あーいう切羽詰った状況で女の子を口説くのも彼ならではだし(この“性欲”にもきちんと前フリがあったりする)、非常用食料として大事にしていた“蛇”も、マックスを助ける為に躊躇無く敵に投げつけたりする。
 ――そうなのだ。
 彼はいつしか気性の荒いマックスの相棒を自認し始め、その友情を誠実に実践し始めるのだな(何だかんだで、最終決戦にも空から参戦するしね)

 “人も土地も荒廃した世界”で、無償の友情をあれほど他者に与える事ができる人物なのだ。
 彼が最後に部族のリーダーに就任したのは、ある意味当然の帰結なのかも(人々は“人間らしい生活”を目指して長き旅をするのだから)
 あのブーメラン少年の「空から来た男」という表現は、それなりに趣き深いものがあるよのぉ。
 そうそう、ブーメラン少年である。
 この映画は、基本的に成長した“彼”のモノローグで始まり、そして終わる。
 つまり少年がマックスというアウトローヒーローをどう受け止め、どういう行動を選択したのか?
 ――そういう視線で物語を観てみるのも、また一興である。

 そういやあのまま道路に置き去りにされた(つうか居残った)マックスは、あれからどうしたのだろう?
 どうやって、あの場から旅を続けたのだろう?
 ――これは昔からずっと疑問に思っていた事だったのだが……

 今回DVDを観て、ようやく納得。
 何とOPやEDで描写されるマックスの傍らに、パッパガーロが乗っていたマシンがあるんだよな。
 そっか……だからパッパガーロがヒューマンガスにやられた時、マシンが大破せずにフェードアウトしたんだ(笑)
 納得。

 そしてマックスとパッパガーロも、実は“対”のキャラだったと思い至る。
 まさに“黒と白”

 納得、納得。

 さて次は、マッドマックス1である。
 はよ、来い〜〜〜

2005年5月1日(日) 





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