「スターバック、大丈夫か?」「今日は体調が悪くて、飛行に向いてないんだよ」「スチームで尻を火傷したらしい」(笑)

宇宙空母ギャラクティカ (1978年)

- エクソダス英雄譚 -

 つい先日、宇宙空母ギャラクティカ〜DVDボックスの全話視聴を完了したっす。
 しっかし正直言って、こんなに面白いドラマだとは思っていなかったなぁ。

 中学生の頃観た印象はそれほど良いものではなく、「設定はそそられるがお話はお子様ランチな、所詮は特撮とメカだけが見所の(しかもバンクばかり)B級テレビシリーズ」――ってのが素直な感想だった。
 で、そもそも日本で放送された話数は全9話……で、今回DVDに収録されている、本来製作されたオリジナルは全21話(アレェ?(笑))
 それだけでもスゴイのに、中には「銀河伝説・惑星コボルの秘密」みたいに本来前後編になっているのを、強引に一話に纏めてしまったりしてる。
 ただでさえ1時間枠の実質的な尺が日米で違うらしく、かなりのシーンがカットされている(約6分くらい?)というのにさ。
 しかもそのカットの仕方がまたすごい。
 謎の円盤UFOのDVDを観た方なら解ると思うが、派手なシーンは極力残し、肝心要のドラマシーンをカットする傾向が強いのだ(当時の日本ではSFというジャンルが、大人の観るドラマとして認知されていなかったのだろうなぁ)
 劇場版として公開された第一話ですら「劇場公開版95分」<「劇場版DVD124分」<「DVD収録第一話134分」なのだ。

 サイロンはなぜ機械化帝国となったのか?――その創造主たちは今?(メカマフィットとの対比をしながら、アポロのボクシーへの教義的な語りとなる)
 アセナの反戦主義と、男を鼓舞する奔放なカシオペア――その間で逡巡するスターバック(つまりただのラブコメ的三角関係じゃなかったのな)
 移民団編成時におけるアダマ司令官の苦悩(脱出用外洋型宇宙船に乗れずに、そのまま置き去りにされた人たちがかなりいるらしいのだ)――そういった弱気な父に対するアポロの焦燥。

 ――こういった魅力的なドラマ上のディティールが、スコンと欠落していたのよ。
 これじゃ製作者側の意図が伝わらないし、ドラマの深みもまるで味わえない。
 ぶっちゃけて言えば――私自身このDVDボックスを観るまで、真の宇宙空母ギャラクティカを全く知らなかったと断言できる。
 でもこれで、何故アメリカのファンダムでこの作品がいまだ根強い人気があるのか、やっとわかったよ、うん(笑)
 とにかく――第一話に限らず、シリーズ通してシナリオのクオリティはかなり高い。  キャラクタードラマとしてもかなり緻密に作られており、他の話数との連続性も意外にあるしな。
 シリーズ前半はアポロを中心にアダマ、アセナ、セリーナ、ボクシーといった家族ドラマを主に展開していく。
 特にセリーナが3話で死んで以降、母を失ったボクシーをアダマ(血の繋がらないおじい様)やアポロ(同じく血の繋がらないパパ)が優しく気遣う場面が多くなるのが、ハートウォーミングで何ともイイ味出してるっす(アポロが行方不明になった際に、スターバックが呟く「このままボクシーを孤児にしてたまるか」という台詞など、結構胸にクルものがある)
 でアポロとスターバックのバディ・ドラマを軸にしながら、シリーズ後半は主にスターバックの成長物語(笑)が描かれていくのだから、こちらの予想の斜め上をいってるよな。
 運と勘のヴァイパー乗り――スターバック中尉(とりあえずエース・パイロット)
 アセナにカシオペアとの三角関係は、やがて彼がカシィ(カシオペアの愛称)を選ぶことで終息を向かえるが、そこに現れたのがカシオペアの昔の男――空母ペガサスの伝説的司令官ケイン(こいつがもうジョン・ウェインばりなアメリカン・ヒーローでさ。もう笑っちゃうくらいバリバリのタカ派。でも悪いヤツとしては描かれていないのがポイント。アダマとは水と油だがな(笑))
 で、すったもんだがあって、ケインが行方不明となりスターバックとカシオペアは元の鞘へ収まる。
 そうこうしてるうちに、今度は謎のヴァイパー部隊消失事件である。
 部下や仲間を次々に失い焦燥するスターバック(氷の惑星アルクタでのナヴァロン砲攻略(笑)の際も、スターバックは敵の捕虜になった部下の事を異様なくらいに心配していた。ま、彼には隣人や友人の喪失について大きなトラウマがあるのだが……)
 そしてついには、彼の眼前でアポロが悪魔メフィスト・フェレス(!)に撃たれて本気で死んでしまうのだ―― で、どーいった展開となるのかは此処では語るまい(笑)
 次の回では、ついにスターバックの詳しい生い立ちが明らかにされる。
 彼は幼い頃、カプリカのサイロン襲撃によって両親を失った戦災孤児だったのである。
 あの幾度となく見せてきた無謀な捨て身の行動は、全てにおいて何らかの献身的行為であり、彼の強い孤独感の裏返しでもあったのだ(前述の「ボクシー〜云々」もそう考えれば、彼にとってかなり切実な台詞だったのがわかる)
 しかしそんな彼の前に、生き別れとなった父を名乗る男が現れる――
 この男は本当にスターバックの父親なのか? ただのペテン師じゃないのか?
 ――そんな仲間の心配をよそに、舞い上がり子供のように喜ぶスターバック。
 その父親を名乗る男が、この戦争で行方知れずになった人たちの「人探し」を生業にしていると知り、彼は軍を辞め父親の仕事を手伝おうと言い出す……(この父親役をなんと往年の名タップダンサー、フレッド・アステアが好演している)

 で、この父親騒動が終結したら、次はなんと娯楽船ライジング・スターでの殺人事件に巻き込まれるのが、何とも彼らしいところだ(星回りがいいのか、悪いのか……何にしても極端な人生ではある(笑))
 当然のように加害者としての容疑をかけられ、ブラスターの銃痕(笑)も犯人の銃とスターバックの銃が一致してしまい、まさに絶対絶命――
 弁護を引き受けてくれたアポロとブーマーの友情を信じる――いや、信じたいスターバック。
 「愛してる、あなたの無実を信じてる……でも……」
 ――カシオペアはそう彼に語りながらも、現実的な勝訴は有り得ないと判断し、検察の主張を受け入れ正当防衛を主張した方が刑が軽くなると囁く。
 苦悩し、苛立ちを募らせるスターバック。
 そしてついには運命の法廷が開かれる――
 どうです? 面白そうでしょ?
 こういったスターバックの物語を終えたあと、物語はもう一つの(パラレル的な)地球の姿――惑星テラへと舞台を移し、白尽くめの高位生命体(神様?)に導かれながら、非常に風刺性の強い寓話を展開していく。
 ブラックというかシニカルで、どこかコミカルなその物語は、SFというよりもやはりファンタジーの領域に近いのかも。
 人類の裏切り者バルターも(故ジョン・コリコスが好演)、道化として実に生きいきと描かれている。
 これが笑っちゃうくらいに悲惨な展開なんだがねぇ……まぁ自業自得と言えばそれまでなんだが(笑)
 とにかく彼の物語上における立ち位置の変転はムチャクチャなものとなっており、後半では憎たらしいがどこか愛すべき悪役として独自のポジションを確立していくのだ(ラストは明確に描かれてないが、おそらく彼の犯した大罪は取り合えず許されたんだろうなぁ。彼の表現するものは、おそらくユダそのものなんだろうが……)
 「またお前たちか、スターバック!アポロ!」
 ――終盤において思わずこう吐き出しながら頭を抱えるバルターは、なかなかにナイスだ(笑)
 結局、このギャラクティカ――
 よくスターウォーズの二番煎じと揶揄されるが、きちんと観ていけば根本的に別のものである事がわかる。

 つか、ぶっちゃけジョン・ダイクストラの担当した特撮パートが似てるだけじゃん(笑)
 しかも大先生は本家本元SWの特撮ディレクターだったんだから、厳密に言えばパクリというのも当てはまらず。

 もっともあの使いまわしは、流石に何とかならんかったのかね?
 せっかく映像的にはカッコいい画づらなのにさ――あんなに何度も使ったら、印象的な映像なだけに憶えやすいし飽きるのも早い。
 まぁ、当時としてはあの映像を1カット撮るのに大変な時間と金が掛かったんだろうし、テレビ・シリーズとしてはアレが限界だったのも容易に想像できるがね。

 ただCGバリバリのリメイク版ギャラクティカを観てると、ショボーンとなるのは何故?(笑)
 スターバックが女?
 サイロンが女性型アンドロイド?
 スタッフはナニやらリキが入っているようなのだが、こちらは観る前からシオシオである。
 年末にはDVDが発売されるらしいが――さて、どうしたものか……

2004年9月20日(月) 


その星の名は“地球”だ
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