十兵衛ちゃん②～シベリア柳生の逆襲

十兵衛ちゃん② シベリア柳生の逆襲 (2004年)

- 炎と氷の演舞 -

　ここ数日、イラク邦人拉致事件の報道があまりに面白すぎである（不謹慎な物言いだが、事実なんだも～ん）
　おかげでネットに張り付いてしまい、トイレ等でなかなか席を立つ事すら出来ん（苦笑）

　さて、それはともかく“前回”に引き続き“十兵衛ちゃん②～シベリア柳生の逆襲”についての感想、である。

　そだな～観始めて初めのうちは、正直つまんなかったのだ。
　１～４，５話くらい？
　もう全然ノれなかったのよ（途中で観るのを止めようかと思ったぐらい）

　原因はイロイロあるが、まず挙げられるのが主演声優陣の交代だろう。
　特に自由役の小西寛子が堀江由衣に変わったのが、あまりに痛かった（四郎は…まぁ、どうでもいいや。今回の役回りはたいした事ないし（笑））
　堀江嬢は別に役者として嫌いではないのだが、やはり“小西十兵衛ちゃん”のインパクトが強すぎた。
　頑張って堀江が前作のキャラに似せようとすればするほど、逆にイタさが増して行くのだから始末に終えない。
　十兵衛ちゃんの根幹でもあった小西的なギャグは、シナリオ段階で極力排除されてるしね～（勿論声優交代が、ギャグ排除の原因の全てではないと思うがな。詳細は後述）
　彩や番太郎が前作と同じキャスティングなのが、せめてもの救いかな。
　番太郎、個人的に大好きだし（笑）

　それ以外にノれない要素といえば、初めっからドシリアスな雰囲気が物語を支配していた事だろうな。
　そりゃ前作のラストからダイレクトに続いているお話なんだから、前作初期のオバカな雰囲気に戻れってのが無理な話なんだろうけどさ（この辺が続編モノの辛いとこだろうな）
　ただ大地監督作品の良さって、ギャグを重層的に畳み掛けながら、次第にその中でシリアスなドラマを浮かび上がらせるトコロにあると思うんですよ。
　というのも“前回の日記”にも書きましたが、この監督の真面目な表現って、結構ストレートでキッツイんですよ、マジな話。
　生々しいっつーか、イヤらしいっつーか、目を背けたくなるような嫌悪感があるっつーか（“いま、そこにいる僕”なんて、その最たる作品だよね。良い悪いの評価は別にして）

　で、監督自身“その事”に自覚的で、だからこそ過剰なくらいにギャグをまぶして、作品内のバランスをとっているんだとも思うんですよ。
　ところが前作において、この十兵衛ちゃんという作品の本性（シリアス）を一度は視聴者に曝け出してしまっている。
　つまり正統的な続編であればあるほど、ギャグで誤魔化せないんですよ。特に自由と彩の親娘ドラマの部分はね。

　だからおそらくこのパート２を作るにあたって、ギャグ担当のキャラをバンカラ・トリオと四郎に振り当て、あえて本筋に絡ませない構成にしたのだろう（番太郎たちも自分たちの“立ち位置”に自覚的だし）
　しかし、これが微妙に失敗しちゃっているのよ。
　ギャグとシリアスが遊離しちゃってるのだ、もう完璧に。
　かといって今更“彩”がギャグ的な振る舞いをしても、何とも言えないイタさが増すだけだしな～
　まさに悪循環である。

　さて、ここまでマイナス部分を書いてきたのだが――
　じゃ、何故そういった体裁の作品が面白くなってきたのか？

　それはズバリ、ハードなアクションアニメとしての面白さである。

　前作においては、実写チャンバラの焼き直しレベルだった殺陣が、今作ではアニメならではのスペクタクル・アクションに変質したと言ってもいい。
　ま、前作より予算が多い“大作志向”の作品になっていると言い切ったら、身も蓋もないんだろうが（笑）

　とにかくテレビアニメの範疇で考えれば、かなり質の高いアクションが連続で畳み掛ける構成となっている。

　中盤の断崖を滑り落ちる様に自由落下しながら、複数人が延々と切りあうシーン等は、既存のアニメにない映像を見せてくれるし――
　11話のラストから12～13話といったクライマックスは大盛り上がり大会となっており、最終話の2人の二代目柳生十兵衛の共闘などは芯からゾクゾクとしてしまったよ。
　誤解を恐れずに言わせて貰えば、この高揚感はTV版ガオガイガーに匹敵するよ、マジにな（もちろん“萌え”ではなく“燃え”だぞ）

　テーマ的には、確かに前作と比べて目新しさはない。
　菜ノ花親娘を中心に、喜多裂斎・歩郎親子～初代十兵衛・フリーシャ親娘～小田豪鯉之介・鮎之介親子を配置する事で、多角的に親子の在りようを描き出そうとしているだけである。
　しかし結局、導き出される結論は前作の延長なんだよな。
　つまり「父は強し」――これに尽きるのである、うん。

　前作であまりに独りよがりな見せ方をして危機感を持った監督が、普遍性を持った親子の絆を表現しようとしたのはいいが、結果的にやっぱり独りよがりになっちまった――そんな感じか？（苦笑）
　だって、あまりに設定が異常なんだもん（笑）
　どの親子も母親不在だし（御影とかを死んだ自由の母親の代打として登場させたのは良いが、結局はギリギリのところでの母性の無力さを見せつけただけだし）、４親子のうち、息子は喜多歩郎だけで他はみんな娘だし（鮎之介も実は……）
　こんな偏ったキャラ配置と描き方では、いくら数を出したところで普遍性は語れんだろうし、相対化もできんよ（笑）

　しかも前作であれだけ“自由LOVE”だった番太郎や四郎が、いやにあっさりフリーシャへ鞍替えしようとするあたり、オレには監督の父親としての悪意しか感じんのだがな（父親の娘を想う気持ちだけは永遠だとかなんとか……いやこれは寧ろ、娘を奪われたくない父親の心情か？（苦笑））
　そう考えれば自由が恋をしていた鯉之介が、結局一児の父親だったってのも……なんだかな～

　そんなに父親ってのは偉いのか？（笑）

　まぁねぇ……こんな風に叩き気味に書いてはいるけど、表現者としての大地監督はそれほど嫌いじゃないのよね――つーか、むしろ好きなんだろうし。

　　とにかく前述した通り、アクションで魅せるアニメ作品としては一級品です。
　久しぶりにアニメでバーニングしたいヒトは、一見の価値あり！

　最後に登場する真・二代目柳生十兵衛の勇姿に、貴方はきっと心・震えますぞ！！

2004年4月13日(火)　

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