ハリー、君は何故いつも雨傘を持っているんだ?

遠すぎた橋 (1977年)

- 勝者無き戦争 -

明日に向かって撃て”や“ブルース・ブラザース”を挙げたのだから……
 今日はやはり昔観た、大好きな戦争映画について書こうと思う。

 でもね〜戦争映画だけは、絶対に“これが一番”ってな感じで書く事ができないんだよなぁ。
 理由はとっても明白。
 “戦争”などという根源的なヒトの行為を、一面的に捉えてしまっては非常にまずいからである。
 少なくとも私の中では、常にそういったバランサーが働いている。

 で、そんな私に強い印象を与えた作品たちとは――
 “遠すぎた橋”“最前線物語”“ナバロンの嵐”“フルメタルジャケット”――そして正確には西部劇の範疇に入るんだろうが、“ソルジャー・ブルー”などである。
 “フルメタルジャケット”をのぞけば、これまた極端に古い映画ばかりだ。
 それに映画の質だけで選んでいたら、こんなチョイスにはなるまいよ。
 “遠すぎた橋”や“ナバロンの嵐”なんて、世間一般の評価はさほど高くないしな(というか、かなり低い)
 でも私にとってこれらの作品は、唯一無比な存在なのだな。
 やはりその作品に接した“時期”が大きいのだろう。
 揃いも揃って「小学高学年〜中学」に観たヤツばかり(笑)
 巷でよく見かける“ゼータ世代”“エヴァ世代”の気持ちも、そういう意味では何となくではあるが理解できるよなぁ。

 という訳で――
 本日は“遠すぎた橋”について、です。

 この映画は、初めて自分1人で映画館に行った作品でもあり、それだけに思い入れも強い。
 それまではテレビのロードショウなどで戦争映画は観ていたのだが、基本的にはどの作品もエンターティメントな作りであった――同じ原作者の“史上最大の作戦”にしてもしかり。
 ところがこの映画――映像的スペクタクルという意味合いでは確かに“娯楽作”なのかもしれないが、観終わったあと単純に気分が高揚する作品では決してなかったのだ。
 まさしく“遠すぎた橋”というタイトルが、すべてを語っているといえよう。
 あれだけの物資を投入して――
 あれだけ大勢の兵士の心身を傷つけ、その命を無に帰し――
 あれだけオランダを焦土と化し、民衆の命を奪っておきながら――

 結局、連合軍のMG作戦は、最後の橋を目前にしながらも水泡に帰してしまうのだ。

 一時的な解放の気分に華やいだオランダの人々は、連合軍の敗北によって再び舞い降りた絶望の二文字と共に、静かに戦車のキャタピラの下へと消えて行く――
 今作戦で勝利を得たドイツ軍も、勿論例外ではない。
 なぜなら――しばらくして結局は連合軍に敗北する運命にあるのだから。
 後に何が残るというのだ?

 小学生当時の私には、この映画の全てを理解する事は出来なかったに違いない。
 現に、数年後に同じテアトル電気で催されたリバイバル上映にも、しっかり観にいっているしな。
  だが子供心に、とても強いインパクトを受けたのは、今でも鮮明に記憶に残っている。
 産まれて初めて正面からみた“反戦映画”なワケだし……
 なによりも、意味合いを多分に含んだ刺激的な映像の数々に、すっかり虜になってたんだと思う(よく判らないながらもね。この辺は“ウルトラセブン”あたりと通じるモンがあるかのも(笑))
 戦場でタクシーを拾おうとする老婆が、マシンガンのダンスを踊る。
 平和なオランダの一屋敷が野戦病院と化し、白色の壁紙が次第に血色へと染まっていき、芝生が敷き詰められた美しい庭園は陰惨な墓標だらけとなっていく。
 MG作戦の提唱者ブラウニング中将は作戦失敗が決定的になってもなお、涼しげな表情で午後のティータイムを楽しむ事を忘れない。
 対して最前線から逃げる事もままならない負傷兵たちは、レクイエムを歌いながらも、迫りくるドイツ兵をジッと待つしかなかった……

 リアルな映画では、決してないだろう。
 むしろあまりに“作為的に作られた”映像の羅列だと言える。
 しかしだからこそ「作品」として観た場合、ドキュメント以上にテーマが透徹に浮き出てくるのではないのか?(もっとも“ドキュメンタリー作品”だって、編集の志向性如何ではリアルとは呼べなくなるのだが。ニュース配信も同様)
 ま、大人になって観直してみると新たな発見があったりして、またもやこの映画の株が自分の中で上がったり(笑)

 しかしなぁ……
 確かに観ていてスカっとする類の作品じゃないのは判るのだが、この映画に対する「大いなる無駄遣い」などという日本での評価は何とかなんねぇのかなぁ。
 この映画の監督リチャード・アッテンボローは、海外ではそれなりの評価を受けているようなのにさ(確か“ガンジー”ではアカデミー賞を獲ってるよな?)
   しかも脚本は“明日に向かって撃て”のウィリアム・ゴールドマンだし(ここんとこが一番重要かも(笑))

 ――とまぁこんな感じで、始めに書き連ねた他の戦争映画についても、いずれはこの日記で書いていこうと思ってます。

 “最前線物語”とかは是非書いておきたいしね。

 つーワケで、本日はこれにて。


2002年3月19日(火) 


……
Great scene select


HOME