PRIVATE CD REVIEW
Page: 1 | 2 | 3 |

FAVORITE CD Act.021
THEY MIGHT BE GIANTS
- Miscellaneous T B Side Remix Compilation


THEY MIGHT BE GIANTS
Miscellaneous T
(Amazon)
「キャプテン・センシブルが好き」とか書いてる時点で、いずれこのコーナーで“They Might Be Giants”(以降TMBG)や“XTC”などを取り上げるであろう事を予測した諸氏も、かなりいたハズ
まぁ、まさにその通りなワケで、返す言葉も無いオレなのだが(苦笑)

で、TMBGサウンドってのを簡単に表現すれば、打ち込み系ブリティッシュ調ポップチューンの王道なんである。
こういった、文字通りに“玩具箱を引っくり返したような”シニカルでワクワクハッピーな音楽性って、個人的に大好きなんだよなぁ。
ただ初めに驚いたのが、このTMBGのメンバー(アコーディオン弾きのジョン・リンネルとギターのジョン・フランズバーグ)が、実は2人とも生粋のニューヨーカーって事である。
何故此れほどまでに洗練された、如何にもな英国風サウンドに仕上がっているんだ?
――という疑問も、バンド名の由来が映画“They Might Be Giants(1971)”からだという事を知って、すんなり納得。
この映画、自分をシャーロック・ホームズだと思い込んだパラノイアが主人公なのだな(笑)
なるほどねぇ……英国風に傾倒するワケは勿論、皮肉が効いた演劇性の根っこの部分すらも良くわかる逸話であります。

で、初期から中期にかけてのアルバムの中で、特に良い意味でラフに弾けたカンジのこのB-sideコレクションを、個人的な彼らのベストに推しまする。
特に“For Science”〜“(She Was A) Hotel Detective”の流れは、最高に格好良いポップロックですな(間に挿まれたミニドラマを省いて聴くのが、ノリとしてなお良し)
今回は選ばなかったが、3rdアルバムの“FLOOD”も負けず劣らず素晴らしいっすよ〜
だが5枚目のアルバム“John Henry”以降、リズムボックスによる打ち込みをやめて所謂バンド編成になってしまい、魅力の大きなウェイトを占めていた“チープさ”が薄れてしまったのは残念至極である。
楽曲自体は悪くないのだがねぇ……普通のバンドになっちまったっていうかさ(生音が悪いってのも、妙な話ではあるが。しかし以降のTMBGに個人的な興味が無くなってしまったのも事実)
最近はディズニーで活動しているらしいが、マジにキッズ向けにしてどうするよ……シャレにならんだろ、一時期のスピルバーグあたりと同じでさ。

FAVORITE CD Act.022
THE DOORS - Strange Dayz


Strange Dayz
まぼろしの世界
(Amazon)
そもそも“サイケ”である。
なんつっても、我が国には基本的に“存在しないハズ”の“ドラッグカルチャー”である。
ごくごく平均的に善良な日本人であるワタクシは、当然“ドラッグ”なぞ一度も嗜んだ事がなく(笑)
聞いた話だと、“トリップ”してる最中にこの手のサイケミュージックを聴くと、独特のすんげぇ脳内音響になるんだとさ。
ふ〜ん……つーことは何か?
このバンドのテーゼでもある“知覚の扉”とかいうもんを、私は一生開く事ができないのか……そりゃ悔しいよなぁ、1ロックファンとしてはさ。
とはいえ、総じてサイケと呼ばれるサウンドって、“普通に”聴いてもメチャ好みな曲が多いんだよね。
んで、「アルコールで代用する」のもアリだと聞き及ぶも、それって何か違くねぇ?(爆笑)
ま、何にしても、取りあえず“いつも通り”にして聴けばいいワケだ……全く持ってショボイ話である。
与太話はこの辺にして、本題に入りましょうかね。

さて、60年代サイケデリック・ロックを代表するバンドと言われる“ドアーズ”である。
年齢的に当然後追いのワタクシといたしましては、彼らの持つ時代性なぞリアルに実感できるはずもなく。
故ジム・モリソンのカリスマ性も情報としてそれなりに知ってはいるが、ヨーワカランというのが正直なトコだ。
ただ歌詞を読み解き、サウンドを真摯に受け止める事で、確かにこのバンドが大変優れたアーティストだと言う事はよくわかる。
ジムのヴォーカルは時に優しく、時に畏怖を持ってリスナーを包み込んでくるし、レイ・マンザレクのキーボードは非常に印象的なフレーズを聴かせてくれるのだ。
陰性を伴って広がる音楽空間はアバンギャルドながらも、ある種の優れたポップサウンドとして成り立っているしなぁ……
CDプレイヤーをリピートにしていると、ヘタすりゃそのまま延々と聴いてるし(笑)
ま、そんだけナチュラルに心地よいサウンドなんだよね。
彼らのベストは1stか2nd、それと実質的なラストアルバムである“L.A.Woman”の中のどれかだろう。
でムチャクチャ悩んだ結果、この2nd“まぼろしの世界”に決定。
英表題曲“ストレンジ・デイズ”から続く2曲目の“迷子の少女”の流れは、ダウナー系の心地よさ満点で個人的には最高ッス。
ただドアーズビギナーは、やはり1st“ハートに火をつけて”から入るべきだとは思うがな〜

FAVORITE CD Act.023
TRANSVISION VAMP - Velveteen


Transvision Vamp
ヴェルヴェティーン
(Amazon)
80年代後半に一瞬だけ現れた、ヒジョーにインチキ臭いロックンロールバンドである。
オレらの世代だと、“フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド”的なイカガワしさ、といえば判りやすいかね(笑)
ただこのバンドがオモシロイのは、そーいったレコード会社の“作為的な仕掛け”でありながらも、おそらくはバンドのメンバーの趣味性(音楽性)が作品にかなり反映されているんだろうと察せられるトコロである。
サウンド的には60年代以降のロックシーンのパロディともいって良い内容で、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドからT-REX、ピストルズ、果てはボブ・ディランやセルジュ・ゲーンズブル(!)の引用まであったりする。
はっきり言って無節操極まりないのだが、そこに“ジグ・ジグ・スパトニック”的なアプローチをする事で、独特の立ち位置を確立する事ができたのだな(つか、本家ジグジグよりも成功している)
サウンド面を仕切っていたニック・クリスチャン・セイヤー(G)の作曲能力は非常に高いと思うし、そもそも個人的にも好きな方向性なんである。
つまりミーハーな1ロックファンとして、当時アレをヤるのは、心情的にとっても理解できたのだ(サイバーパンクで、オールドスタイルのロックンロールってヤツ(笑) ただ単にMCAの連中に踊らされてるだけかもしれんがな〜)
で、フロントが、これまた存在自体がイカガワしい事この上ないウェンディ・ジェームスなんである。
ブロンドである。
セクシーである。
キュートである。
バンドのシンボルは、定番のハートマークである。
……困ったモンである(笑)
つまりちょっとオタク入ったマニアックなサウンドに、ヴィジュアルを売りにしたアイドルをのっけたバンド――それがトランスヴィジョン・バンプだ(身も蓋もないな〜)

こんなんだから、アルバムも発表されるたびに雰囲気が変わってくるのも仕方なし。
1stは、まさにこのバンドのコンセプト通り――徹底したサイバー&パンク(所謂“サイバーパンク”ではなく、本来的な意味での“PUNK”)
しかしその分、アルバム全体に作り物臭さがプンプンと匂っており、このオレでも流石にマジメな評価は出来そうもない。
かといって3rdアルバムみたいにメンバーの音楽性が全開になると、それはそれで違うような気がするし……(ぶっちゃけ地味。これがラストになったのも頷けるッス)
で、程よいバランスで聴かせてくれるのが、この2nd〜ヴェルヴェティーンである。
1stほど肩の力が入っておらず、相変わらずのリスペクトにこちらもニヤニヤしっぱなし(何といっても表題曲“Velveteen”がとってもヨイ)
ウェンディのボーカルも絶妙に女っ気を振り撒いており、非常に楽しいアルバムになっている。
しかしこういった活きの良いオバカ系ガールズロックも、久しく聴かなくなったなぁ……
t.A.T.u.なんぞは、個人的には絶対認めたくないしさ(笑)

FAVORITE CD Act.024
RY COODER - Paris,Texas


RY COODER
パリ、テキサス
(Amazon)
今回は“ライ・クーダー”のアルバムからチョイスしようと思い、CDをラックから取り出してみたのだが、ここでちょっとビックリ。
オレってばサントラも合わせると、ライのアルバムを6枚も持ってたのな。
何時の間にこんなに買ってたんだ?(笑)
そのくせ最近巷でブレイクしたらしい“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ ”は持ってねぇし(買ってないんだから、そりゃ当然だわな(苦笑)

で、改めて久しぶりにライの“古い”アルバムをぶっ通しで聴いてみたんだが……やっぱイイわ、うん。
しかしどのアルバムも最高に気持ちよく聴くことが出来るのは、ある意味驚異的。
ストラトの名手が奏でる味わい深いスライドは勿論、起用しているミュージシャンたちも実に素晴らしいサウンドを聴かせてくれるのだ。
やっぱライはプレイヤーとしての評価以上に、プロデュース能力を評価すべきなのかもね。
“ブエナ〜”も、おそらくそうした意味での成功作くさいし(未聴だけどな〜(笑))

で、この“パリ・テキサス”のサントラである。
ライのアルバムにしては珍しく、全編“陰性”の心象風景に彩られた作品でもある。
しかも使用楽器はほぼギターオンリー。
ヴォーカルが1曲あるくらいで、後は一部にピアノが使用されているくらいか?(リズム隊すらないのだ)
ライナーにクレジットされているミュージシャンは、ライを含めて計3名――
つーことは、ほぼライ1人の演奏でこのアルバムを収録している事になる(笑)
このアルバムが異色作でありながらも、ライ・クーダーという名ギタリストの代表作と評される所以は、此処にあるのだな。
いつもの“アメリカン・ミュージック”へのリスペクトは鳴りを潜め、ライの持つ一番シンプルで確かな音楽性が、極めてリアルなアメリカの空気……土着的な“乾いた風”と共に、ストレートに伝わってくるのである。
“喜怒哀楽”といった極端な感情を排した際に残る、虚無的な心象の発露、とでも言うべきか。
ま、このアルバムはサントラなんだから、本編の監督ヴィム・ヴェンダースとの相性が良かったってのも、この作品が成功した大きな要因 なのは間違いなかろうね。
ウォルター・ヒル作品では、間違いなくこういったサントラは制作しないだろうからさ(笑)

そうそう、話は変わるが――
“ストリート・オブ・ファイヤー”のサントラって、やっぱ発売されてないのかね?
歌モノばかりのアルバムじゃなしにさ。
主人公のトムが、ボンバーズのアジトを襲撃する時に流れていたBGMが欲しいんだよなぁ……
つか、あの辺のシーンを観てライ・クーダーって“劇伴作曲家”が好きになり、後に実は凄腕スタジオ・ミュージシャンである事を知り、そして今に至るのだ。

メモリアルな曲なんだけどねぇ……サントラに未収録の為、曲名すら分らずじまい(トホホ)

FAVORITE CD Act.025
BARRY GRAY - Captain Scarlet


BARRY GRAY
Captain Scarlet
(Amazon)
“キャプテンスカーレット”のサントラCDを、“ギャラクティカ”のサントラと一緒にAmazonで購入。
予てより欲しいなぁ〜と思ってた楽曲は全部入っておりました。
もおバリーグレイ、最高っ!
“サンダーバード”に比べて若干軽めなサウンドになってますが(単純に編成が少ないというより、むしろバンドサウンド志向により)、その分妙にメロディの押しが強くなっています。
内容が地球防衛軍モノですし、何よりもスカーレットという不死身のヒーローの物語ですからねぇ。 ヒロイズムを煽る音楽が多くなるのは、致し方ナシでしょう。
とはいってもこのスカーレット本編を観た方には分かると思いますが、そう単純にカッコイイだけの物語ではないのです。
むしろ、人間の限界を感じる局面ばかりが描かれているといって良いのかも(ドラマ上の実質的な主人公はスカーレットではなく、むしろ普通人の相棒ブルー大尉だしね。この辺は実に旨いキャラ配置っす)
そもそも火星における事の発端(ミステロンとのファーストコンタクト)は地球人側に非があるわけだし、シリーズ通してもスペクトラムの作戦完遂率も8割に満たないんじゃなかろうか?
つまり、全編通して辛い話が多いのだ。
故にこのキャプテン・スカーレットって、普通に楽しめるオハナシとはとてもじゃないが言い難いのよ(しかしイギリス本国では、サンダーバードより熱狂的なファンが多いんだそうだ。この辺は、いかにも斜に構えたジョンブルらしいよねぇ――って自分を棚にあげるなって(笑))

そこに、バリー先生の妙にポップでメロディアスな音楽である。
このミスマッチさ加減が、個人的にはたまらなく味わい深いのだな。
サントラでストレートに楽曲を聴いていると、余計にその感慨は深くなるッス。
大仰に言えば、ある種の哲学的な刹那さえも、音の狭間に感じる事があるのだ。
どことなく悲壮感漂うスペクトラムのマーチングテーマに、最終回で使われたクラウドベース壊滅の際の音楽(組曲として収録されており、聴き応え十分!)なんてモロ葬送行進曲っぽいパートがあるし。
ヴァージョン違いで2曲収録されている“WHITE AS SNOW”も同様――
曲自体は弾けたサイケポップなのだが、そのムードは単純に明るくもなければ、逆に暗くもない。
ヒロイズムと同時に、何とも言い尽くせない辛さが、軽快なリズムと共に通りすぎていく……な〜んて、勿論オレの感じすぎかもしれんがね(苦笑)
これに似た感慨は、実を言えばすぎやまこういちの“イデオン”を聴いた時もあったのよ(“シリウスの伝説”とかだと微妙に違うんだよな……良い悪いじゃなしに。強いていえば、アーティストが音で表現しようとしているモノの差か?)

そうそう――バリーグレイと言えば、千住明氏がリスペクトしてるのも有名。
氏の書いた“交響曲Vガンダム”も、実はかなりの傑作!(サントラ版よりも聴かせる構成になってるっス)

そう思い立ったら、やはり直ちに聞きたくなるもんで……
ファイルをクリックするだけでいいんだもん。
パソコンって便利だよなぁ……(しみじみ)

こんな風に音楽たちの軌跡を辿りながら、ラムを飲み、1時間もしないうちに眠る事になるんだろうね…… これはこれで至福な一時……
 
2003年11月20日(木) の日記より

FAVORITE CD Act.026
Dr. FEELGOOD - Down By The Jetty


Dr.FEELGOOD
Down By The Jetty
(Amazon)
「普通の、何処にでもあるようなロックンロール」
――そういった形容を、よく雑誌やインタヴュー映像で読んだり見かけたりするのだが、果たして具体的にはどういったサウンドの事を指すんだろうねぇ……
ま、大方において“ストーンズ・タイプ”のバンドを指す場合が多いようだが。
しかし個人的には、ストーンズみたいなバンドが其処彼処に転がってたら驚きモンである(苦笑)
ミックやキースみたいな連中が“普通”なワケねぇだろ。

さてさて、ここで今回取り上げる“ドクター・フィールグッド”(以降“Dr.FG”)である。
結成は70年代初頭。
彼らはグラム〜アートロック〜プログレ等といった華々しいミュージックシーンとは常に無縁な存在で、ロンドンの片隅にある小汚いパブで、唯ひたすらに古いブルースやロックを演り続けていたのだな。
所謂“パブロック”と呼ばれるスタイルなのだが、ま、平たく言えば“ドサ回り”に近い活動だったともいえる。
しかし彼らのサウンドが持つ“タイトで活きのいいビート感”は、やはり古いロックに対するノスタルジーだけじゃなかったのだ。

それが証拠に“若い”ロンドンっ子たちは、当時主流だったプログレのように“高尚なサウンド”ではなく、自分たちにより身近な彼ら(パブロック)を選択していくのだからね(Dr.FGの他にも“エディ&ザ・ホットロッズ”などが同じ流れにある)

そして遂に75年、彼らは念願のデビューアルバム“Down By The Jetty”をリリースする。
傑作である。
無駄なギミックなどは一切排し、純粋にロックの様式のみを、極めて性急なビートで追及する。
――その結果意外な事に、ブリティッシュロックの歴史において「有りそうで、実はそれまでにあまり無い」という、独特なオリジナリティと存在感を獲得してしまったようなのだ。
それこそ「普通の、どこにでもあるようなロックンロール」アルバムなんだが、実際は「このアルバム以外には有りえない」というね(やっぱ“パブロック”というB級フィールドで、しかもウィルコ・ジョンソンのような極めてアクの強いギタリストがメンバーだったせいかね)
ムロン今聴いても充分にカッコイイし、個人的に“シンプルな英国流ロックンロール”をストレートに楽しみたい時には、このアルバムを聴くに限るのである。

――とはいえ、このDr.FGというバンド、“Down By The Jetty”を発表して3年もしないうちに、人気は下降線を描いていく事になる。

何故なら、翌76年には世界初のパンク・シングル〜ダムドの“ニューローズ”がリリースされたからである。
そう、時代はもう既に“彼らの子供たち”へと移行していたのである……

FAVORITE CD Act.027
THE ROOSTERZ - KAMINARI


THE ROOSTERZ
KAMINARI
(Amazon)
“s”じゃない、ルースター“z”の方である。
つまり“大江慎也”不在時が、オレにとってのフェイバリット・ルースターズなんである。
何だかね〜(苦笑)
でも、しょうがないじゃん。
彼らのアルバムを聞く際のヘビーローテーションが、この“KAMINARI”なんだからさ。

確かによく言われているように「リズム隊が弱い」し「花田のヴォーカルは、所詮ギタリストのアレ」である。
が、しかしコレだけカッコイイ“日本のロックンロール”は、そう滅多にお目にかかれんよ、マジに。
まず何よりも、楽曲そのものがイイ!
作曲は花田6:下山4の比率だが、明らかに両者のカラーが異なり、ウマイ具合に棲み分けがなされているのがグッド。
花田がストレートでブルージーなら、下山はちょっと捻くれたサイケ風ってトコか(花田の“OH ! MY GOD”“CRAZY ROMANCE”“NO NO NO”、下山の“DARK CRYSTAL”などは、もうサイコー!)
それにこの2人はギタリストとしても真逆なスタイルで、その絶妙な掛け合いもこのアルバムの“聴きドコロ”である。
花田のカッティングは唯ひたすらにタフでソリッドだし、下山の官能的で多彩なプレイは聴いていて実にスリリング。

そーなんだよなぁ……
けっきょくこのアルバムの魅力は、花田〜下山による2トップのバランスの良さ、なんだろうねぇ。
以降2枚のアルバムでは、個人的には下山カラーが出すぎているような気がするのだな(勿論悪くはないがね。ただこの時点で最大の魅力となっている“骨太な部分”がちょっと失われてしまうのだ)

そうそう、“ギタリスト花田”のヴォーカルも嫌いじゃないよ。
つか“ロケッツ”の鮎川誠じゃないが、ある意味ショボさがカッコよさになってるんである。
こういった感じ方がオッケーなのも“ロックバンドならでは”なんだろうさね。

FAVORITE CD Act.028
MARTIN NEWELL - The Greatest Living Englishman


MARTIN NEWELL
The Greatest Living Englishman
(Amazon)
キャプテン・センシブル、アンディ・パートリッジの盟友にして、60年代ブリティッシュポップの正統なる伝道師――
それが、“ミュージシャン”兼“詩人”のマーティン・ニューウェルだ。

以前キャプテンのプライベートレーベルから発表した“The Brotherhood Of Lizards”は、意欲的な作品ではあったが正直イマイチな出来だった。
アレンジが弱いというか、B級フォークデュオ的なベクトルがあまりにショボかったというか……とにかく折角のニューウェルによる素晴らしいソングライティングが全然生かされていなかった印象が強い(所詮、インディーズってカンジ)

しかしアンディー・パートリッジをプロデュースに迎えたこのアルバムでは、そーいった不満がモノの見事解消されている。
ある意味“開き直っている”っていうかね〜
「もう、オレたちにはこれしかないだろ!」的な“卑屈な”自信(笑)に満ち溢れた快作である。

というのも、作品製作時のニューウェルとパートリッジは、プライベートで失意のどん底にいたらしいのだな(ここで詳細は書かないがね)
で、2人して小屋にこもる、と(笑)
しかしこういったアーティストたちによる“切実な”現実逃避は、得てして予期せぬ傑作を産み出させる原動力となるのかも。

独特な捩れ感覚で魅せる本来的な英国流センスが、見事に一つのポップミュージックとして昇華されていく。
そこにあるのは“哀愁”と“空元気”と“自己嫌悪”であり、遥かなる60年代への実際的な“憧憬”なのだ。

強面のニューウェルが一種独特な詩を極上のメロディにのせて歌い上げれば、パートリッジもプロデュースだけに留まらず殆どの曲でドラムまで担当する熱の入れようである(パートリッジのドラミングはぶっちゃけヘタ。しかしそれがまた60年代風で良いんだよね〜)
当然のように、キャプテン・センシブルもギターで参加しているし。

う〜む、オールドスタイルなブリティッシュポップをやらせれば、間違いなく最強クラスの3人が手を組んでいるのだ。
これでつまらないアルバムが出来るはずは無い。
よくこのアルバムをして「1人XTC」等といった表現がなされるが、そんなチャチなモンじゃねぇよ。

聴けばワカル!

――ってか、聴け!(笑)

FAVORITE CD Act.029
HAWKWIND - Sonic Boom Killers


HAWKWIND
Sonic Boom Killers
(Amazon)
ある意味、非常に曖昧な立ち位置で活動していたバンドである。
コテコテのグラムから始まり、そのあまりに単純なリフの繰り返しはサイケデリックな音楽性を伴いながら、やがてバンドをスペイシーなプログレへと導いていく。
――と同時に、ガツンとラウドなハードロックの味わいは、レミー(G)の途中加入もあってか、後のモーターヘッドへと連なるヘヴィ・メタリックなモノへのルーツにさえなっていくのだ。
う〜む、こうやって書き出してみると、何か物凄いバンドに思えるぞ、ホークウィンド(笑)

いや、実際スゴイバンドなんだろうがさ、何かB級臭いセンスの悪さがサウンド全般に蔓延しているあたり……好きなんだよなぁ(笑)
結成は70年代初頭の、実に長い歴史を誇るバンドである。
当然後追いな私としては、随分後になってこのバンドの存在を“探し当てる”事になったのだが……。

そう、漠然と追い求めて、ようやく“探し当てたバンド”なのである。
というのも、実は幼少の頃から頭の中に“とある音楽のイメージ”があり、その正体が何かずっと分らなかったのだ。

まぁこの際だからぶっちゃけて書くけど、ワタクシ特撮番組“マッハバロン”のテーマソングが大好きだったのだな(大笑)
この曲って、明らかに他の特撮〜アニメソングとは違った“ロックンロール”な肌触りがあったからね。
やっぱ幼いながらも、強烈なインパクトを受けたんでしょう。

んで、ある程度成長しロックを本格的に聴き始めた頃、当然のように“マッハバロン”の元となったサウンドを探し始めたってワケで(カッコワルイなぁ……我ながら)

とりあえず作曲が元ブルーコメッツの(というよりは当時リアルタイムでガンダムをやってた)井上大輔で、昔流行っていた“グラムロック”の影響が濃いらしい事もわかり、高校生だったワタシは近所のレンタル・レコード屋で、当然のように“T-REX”や“デヴィッド・ボウイ”“アリス・クーパー”にぶち当たったんですがね…… ま、違うワケですよ、これが(笑)
ボランもボウィもそれはそれでカッコよかったんだが、どれもこれも探していたサウンドじゃなかった。
で、マッハバロンのルーツ探しは一旦諦めたんですな。

ところが大学を卒業し上京してみると、流石は東京―― インポートも含めたそのあまりの物量にワタシは目がくらみ、急速にCDが普及するタイミングも相まって、一時期ロックのアルバムを手当たり次第に買い漁ったのである(TOWER RECORD各店やDISK UNION、新宿北口界隈には飽きる事無く通い詰めたよな〜)
結局――そのゴチャゴチャとしたコレクションの最中に、とっくの昔に忘れ去っていた“件のサウンド”と、偶然巡り合う事が出来たワケだ。

曲名は“SILVER MACHINE”―― ホークウィンドとの初めての出会いである。

しかし連中のサウンドスタイルがワタシの骨の髄まで染み込んでいたのは、もしかするとマッハバロンの影響だけじゃないのかも。
というのも、この“SILVER MACHINE”――1972年の英国チャートを代表する大ヒット曲だったらしいんである。
やっぱ本人の知らないトコで刷り込まれていたんだろうね(考えてみれば、そもそも初めっから“マッハバロン”を洋楽のリスペクトと決め付けていたワケだからなぁ(笑) よーわからんなりに確証があったんだろ)
ま、今聴くと異様に単純なフレーズの繰り返しばかりで、飽きが来るリスナーも多々いるだろうが、それでもポップで活きの良いロックンロールである事には変わりはあるまいて。

というワケで、あまりオリジナルアルバムに思い入れのないワタクシのお薦めは、比較的最近に発売されたコンピレーション・シングルスの“Sonic Boom Killers”である。
初期〜中期のホークウィンドの美味しいトコが、弛みなく楽しめまっせ。

FAVORITE CD Act.030
CATHY CLARET - Cathy Claret


Cathy Claret
廃盤
基本的に出不精な私である。
極度な面倒くさがり屋っていうかね、どーみてもインドアの典型であるのは間違いなかろうて。
考えてみれば、給料日に新宿やら近所の西友へと買出しに出掛ける以外は、ほぼ必要最小限度の外出しかしないからなぁ……(PCを始めてからは、特に拍車が掛かってるのかも)
――とはいえ実のトコロ、こんな私でも漠然とした放浪願望は強かったりするのだな。
このサイトにアップされている幾つかの稚文を読んだ方たちは、何とはなしに察しが付いていると思いますがね。

まぁ実際には、それほど切羽詰った真摯な心象でもないんだけどさ(笑)
“現実の生活”に縛られている事で誰しもが思うであろう日常への不満と、そういった現状からの逃避が生み出す空しい願望に過ぎない、というね。
しかし“ある種”の強制力が働けば「そういった放浪の生活をやってみたい」と考えているのも、私という人間なんである(例えば、火事でアパートを焼き出された際の、あの感覚の延長で、あてども無い流浪を夢想してみたり……ね。)

で、今回取り上げているキャシー・クラレ嬢だ。
フランスはパリで生を受け、父親の仕事の都合で29回もの引越しをしながら南欧を転々とし、最終的にはスペインのバルセロナに落ち着く、といったプロフィールの持ち主でもある。
つまり彼女は幼少の頃より半強制的に南欧を放浪させらた、いわゆる紛れも無い“ボヘミアン”であり、そしてスペイン流に言えばジプシー的な感性の持ち主でもあるのだな。
フレンチポップ、スパニッシュトラッド、ボサノバ……
実際、彼女の紡ぎだすサウンドは奇妙に浮遊的で、独特の漂流感に満ち満ちている。
フレンチに有りがちなロリータボイスも下品にならない程度に魅力的だし、ピュアな心情を切々とリスナーに伝えてくるのだ。

そーいや彼女の唄を始めて聞いたのは、“世界の車窓から”だったなぁ……
今思えば、なんてナイスにピッタリな選曲なんだ(笑)

慌てて画面の端に映っていた彼女のテロップを確認した私は、その勢いのままCDショップでこのアルバムを探し出したんである。
出不精のワタシにそこまでさせたのだから、ボヘミアン・キャシーはたいした効用なのだ(笑)

FAVORITE CD Act.031
SOFT MACHINE - Jet Propelled Photographs


SOFT MACHINE
Jet Propelled Photographs
(Amazon)
アバンギャルドなプログレッシブ・ジャズロックとして、カンタベリーサウンドの根幹を成すバンド―― それが、この“ソフトマシーン”の一般的な評価であろう。

ところがケヴィン・エアーズの代わりに加入したヒュー・ホッパーの実験的なカラーがイマイチ好きになれないワタクシといたしましては、世間的な名作“Volume Two”よりも1stの“The Soft Machine”の方が好みであり――
さらにぶっちゃければその1stよりも、それ以前にデモ録音された本作“Jet Propelled Photographs”こそが、ソフトマシーン“関係”の個人的なフェイバリットだったりするのだな。
――とはいえ、この時点ではジャズロックでもプログレでもない、“ただのサイケポップ”に過ぎないのだがね(笑)
まぁ“だからこそ”このアルバムが大好きなんだけどさ。

ロバート・ワイアットの擦れた喉は独特の哀愁感を醸し出しているし、馴染みやすいメロディもギリギリのセンチメンタリズムで聴かせてくれるのだ。
この時代のサイケには必須なハモンドオルガンも、メチャカッコイイし……
やっぱ、60年代のブリティッシュポップはサイコーっす!

本アルバムに収録されたナンバーは全9曲。 そのどれもが素晴らしく出来が良く、印象としては物凄くドラマチックな1曲を延々と聴いているカンジである。
これはドアーズ等でも同様で、やはりサイケデリック・サウンドならではの特性でもあるのだろうね(本来的には“トリップ用”だからな)
下手にリピートとか掛けていたりすると、2〜3時間延々と聞いているし(笑)

とりあえず“ソフトマシーン”という1バンドの長き歴史を俯瞰してみれば、それほど思い入れのあるバンドでもないし、格別好きなアーティストでもない。
むしろ彼らが傾倒していったフリージャズは、どちらかというと個人的に苦手なジャンルなのだ。

ただこの“マテリアル・アルバム”だけは、どーしようもなく好きなんである。
メンバーの入れ替わりが激しいこのバンドにあって、結成時のオリジナルメンバーによるサウンドが大好きなんである(ワイアットにエアーズ、最高!)

――まぁ、こういうフェイバリットもアリでしょ(笑)

FAVORITE CD Act.032
THE RUTS - You Gotta Get Out Of It


THE RUTS
You Gotta
Get Out Of It
(Amazon)
今回紹介するのは、70'ロンドンの一翼を担うパンクバンド〜“ザ・ラッツ”のベストアルバムである。
収録内容は名盤“The Crack”を中心に、“In A Rut”や“West On” 等をフィーチャーした、実にイカした構成となっている。
まぁ、“初期パン”言うても時期的にはビリッケツに位置するバンドで、所謂“ポスト・クラッシュ”としての評価が一般的なようだがね〜 正直そこら辺はどーでもよかったりする。
実際、両バンドの方向性が似てようが似てまいが、あんま気にしないし(というより、むしろR&Rは“受け継がれていく音楽”だと認識してますんで)
そもそもオイラは、彼らのカラーでもあるポリティカルなメッセージ性〜云々では、バンドを好きになったりしないからなぁ(つか政治色があまりに強すぎると、逆に嫌いになる傾向が強い)

じゃ何でフェイバリットの一つとして挙げるほどに、ラッツのアルバムを好きになったのか?
答えは簡単――純粋なサウンドそのものが、あまりにクリティカルだったからである。

――とかなんとかゴチャゴチャ書いてはいるがね、結局はこの一言につきるのだ。

コホン…

“Babylon's Burning”はやっぱサイコーだぜッ!
カッコイイし、燃えまくりのキタキタキターッ!!
とにかく聴いてくれ、聴けばワカル、聴かなきゃワカラン、あーもうどうしてくれようか!!!
(って、全っ然“一言”になってねぇ(笑)

まぁ、つまりなんだ――
この曲と“In A Rut”が入ってるだけで、このCDがマイ・フェイバリットになっていると言っても過言ではないワケで。

――とはいえ、他の曲もかなりカッコイイんだけどな。

確かにどちらかと言えば、初期のシンプルなロックンロールの方が大好きなんだがね、後期のレゲェ的要素を取り込んだDub-Punkサウンドも決して嫌いではないのよ(末期のクラッシュみたいにヘタレてないし)
“Jah War”とかさ、ミディアムなノリが何気に心地よいし、独特の倦怠感も丸出しでヒジョーにイケてるッス。

……つか、今日のレヴューはいつにも増して“アタマワルソー”なカンジだね(笑)

しかしコレで良いのだ、ラッツの聴き方はさ。


FAVORITE CD Act.033
PIZZICATO FIVE - On Her Majesty's Request;


PIZZICATO FIVE
女王陛下の
ピチカート・ファイヴ
(Amazon)
バート・バカラックやアルマンド・トラヴァヨーリが大好きなワタクシといたしましては、このピチカートってやはり無視できない存在なんですよね〜

“渋谷系オシャレサウンド”の括りで語られる事の多いバンドではありますが、個人的にはこういった形容があまりピンとこなかったり。
ムロン、90年代に巻き起こったムーブメントとしての“渋谷系”は理解しておりますが。

なんちゅーかね……彼らのサウンドが日本的な風景とリアルで相容れるとは、とても思えんのですよ(ぶっちゃけ嘘臭いんですな、“渋谷系”というカテゴリーそのものが。いろんな意味でね)
60年代欧米系ファッショナブル・ポップチューンに日本語を乗っけ、モダンに洗練させたアンチ和風サウンド――
これこそがピチカートの本質だと思うし、実際そういう風にしか聴こえないからなぁ。
国内よりも、むしろ海外において高く評価されていたのは事実だし。

さて、“女王陛下のピチカート・ファイヴ”である。
数ある彼らのアルバムの中でこれをフェイバリットに挙げた理由は、タイトルやジャケットから察せられるとおり―― “ボーカルもの”でありながらもコンセプト的に“映画のサントラくさい”仕上がりになっているからである。
彼らの敬愛するバカラックやトラヴァヨーリも、劇伴作曲家として素晴らしい仕事をしているからねぇ。
やはり“こういうの”って、やりたくて仕方なかったんじゃなかろうか?(笑)
小西・高浪両氏もミーハーに素晴らしい仕事をしてるし、構成的にも両者のパワーバランスが実に良ろしい。
高浪氏はかなりストレートなバカラック・リスペクトで、一方の小西氏は高浪氏よりも多少幅広い(笑)嗜好性を持っているんだよね。
おかげでアルバム全体がバラエティに富み、すごく楽しいモノになっている。
つか、高浪氏の“ホームシック・ブルース”と、小西氏の“夜をぶっとばせ”はもうサイコー!
――この軽妙で流麗なポップセンスこそが、ピチカートサウンドの真髄さ!!

そうそう、ボーカルの田島貴男がまた良いんだ。
歴代の女性ボーカルも悪くはないが、何故か個人的には男性の田島氏がベストなんである
カッコイイっていうかさ、そういう形容ができるのも、この時期のピチカートならでわッス!(“月面軟着陸”も、この“女王陛下”に負けず劣らず良い!)

――てなカンジで、このアルバムを皆さんにお薦めしてはいるがね。
ただちょっとだけ、聴く時にやって欲しい事があるのだ。

なに、そんなに難しい事じゃない。
“オシャレ”や“渋谷系”というイメージを頭から綺麗サッパリ消し去って、ナチュラルに聴いて欲しいのである。

でないと、彼らのサウンドの本当の良さに気付けないかもしれないよ?


FAVORITE CD Act.034
MC5 - Babes In Arms


MC5
Babes In Arms
(Amazon)
「Sign to ……Kick out of the jams! Mother Fucker!!」
――“MC5(Moter City 5)”の名を聞いて真っ先に思い出すのがこのフレーズであり、名曲“キック・アウト・オブ・ザ・ジャムズ”だろうさね。
そうなのだ、世界で初めて、レコード音源で「マザーファッカー!」と叫んだバンドなんである。
ま、実際に発売された当時のアメリカ版では”その部分”が「ブラザーズ&シスターズ」に差し替えてあったり、日本版や再プレス版では元の「マザーファッカー!」に戻されていたりと、かなりの紆余曲折があったらしい。
その辺は先駆者ならではのご苦労、というものだろうさね。

……つか、本来ならここいらでジョン・シンクレアあたりについて触れながら、いかにこのMC5というバンドが“反社会的”で“政治的にラディカルであった”かを書き連ねていくのが、こういったレヴューの定番なんだろうがさ。
皆さんご存知の通り、オイラにゃあんまり興味の無い方向なもんで、この際スルーしちゃう事にします(“ピストルズ”を楽しむのに「マルコム・マクラーレンがどうのこうの」ってのは必要事項ではないからなぁ(笑))

ただね、彼らが生まれ育ったモータータウン(モータウン)〜デトロイトという環境が、このバンドの重要なキーワードになっているのは間違いないんでね。
ジョン・リー・フッカー、ジャッキー・ウィルソン、アレサ・フランクリン、スモーキー・ロビンソン、マジック・サム、ザ・ストゥージズ……そしてこのMC5である。
いわゆる“モータウン・サウンド”も含め、その辺の系譜が気になる方は、是非調べてみて欲しい。
音楽的にかなり重要な街なのだ、デトロイトというトコロは。

さて、今回フェイバリットとして選んだ、この“Babes In Arms”である。
3枚のオリジナルアルバムと初期シングルからチョイスしたベストアルバムなんだが、通して聴く分にはこれが一番!
エネルギッシュで疾走感溢れるロックンロールのカッコよさが、ストレートに伝わってくる名編集だ。
特に序盤の“Shakin' Street〜American Ruse〜Skunk”の流れは、もう最高!(“Skunk”の最後に長々と挿入されているホーンセクションなんて、もうキマくりやがり)
ムロン、オリジナルMC付きの“Kick out of the jams”も、抜かりなく入っております(笑)

MC5を指して「ルーツ・オブ・パンクス」とは、よく耳にするフレーズだろう。
――ま、正直かなりクセェ形容なワケだがね(笑)
それでもPUNK好きだったら、一度は聴いておかなければならないバンドである。
間違いない!


FAVORITE CD Act.035
STING - The Dream Of The Blue Turtles


Sting
ブルー・タートルの夢
(Amazon)
個人的にスティングってのは、実に厄介なミュージシャンなんである。
このヒトの曲だけは、何と言うかね、他のポップアーティストたちとは違う心構えで聴かなくちゃならんのだな。

というのも、このレヴューページで散々書いてきた事だが、わたくしポリティカルな嗜好性を音楽に投影するってのに、あんまり興味がないんである。
ま、そーいった中にも、まれに歌詞も含めて旨い具合にノれる曲はあるがね。
基本的にイラネ、なのだ(笑)

その点、洋楽はボケ〜と聴いている分には意味合いがダイレクトに伝わってこないので、嫌な方向の歌詞はスルーして聴けるんだよな(ムロン、凄く気に入った曲は歌詞を調べ、訳詞を調べ、その曲の背景とかも調べたりする。その結果、どーでもよくなった曲も少なからず存在するワケだが)

さて、スティングである。
このヒトがソロになって紡ぐ歌詞の大半は、国際紛争がどうの、民族弾圧がどうの、といった具合に、見事なほどワタクシの好まざる方向を向いているのだな(ポリス時代もそういった部分はあったが、ここまで極端じゃなかった)
ただね、純粋に音楽性だけで受け止めるのなら、メロディといいアレンジといい、物凄〜く好みなサウンドであるのも事実(ベースになっているジャズのビート感も、聴いていて実に気持ちよく“たゆたえる”し)

ところが、ここで一つの問題が生じてしまうのだ。
そう、いつもやっている“歌詞の意味性スルー”な聴き方が、非常に難しいんである。

ま、有体に書けば、原因はスティングの独特なボーカルにあるんだがね。
つまり英語なのに、何故か“スティングが何を唄っているのか”が、ストレートに伝わって来ちまうのだ、困った事に(笑)
このアルバムで言えば“ラシアンズ”や“チルドレンズ・クルセイド”などが、その典型。
ビデオクリップを数度観たせいかもしれんが、とにかく一度『この曲は“こういった内容”を唄った物だ』という情報がインプットされてしまうと、それが強烈なイメージでこちらに迫ってくるのよ。
それだけスティングのボーカルが表現力に優れているって事なんだろうし、加えてメロディも分り易くインパクトがあるって事でもあるのだろう。
所謂ポップミュージシャンとしては、何とも恵まれた才能の持ち主なのだ。

ただね…
ポリティカルな視点で世界中の悲劇を、哀感たっぷりドラマチックに謳いあげるっての、
どー聴いたって胡散臭くなるんだよっ(笑)

だからスティングの曲を聴く際は、個人的にとある自己暗示をかけるのです。
スティングは世界中を旅しながら、その土地土地で世の中の出来事を、時に慈愛を持って、時に辛辣な皮肉を持って、ギター(つかベースかね、やっぱ)を弾きながら民に語りかける―― 
そう、浮世離れした“吟遊詩人”みたいなものであると。
けっして理知的な学者先生が、したり顔で世の中を斬っているんじゃない、とね(笑)

〜というワケで
“そういった労力”を必要としないナンバー〜“バーボンストリートの月”が、この記念すべきファーストソロの中で一番のお気に入りなのであります。

んで、この曲とポリスで初めてスティングが作曲した“ロクサーヌ”を聴き比べてみると、実に面白い心象の変化が垣間見えてくると思うよ。

……多分ね(笑)


FAVORITE CD Act.036
ELVIS COSTELLO - My Aim Is True


Elvis Costello
My Aim Is True
(Amazon)
コステロのアルバムからコレをチョイスするのは、あまりにアリガチなんだがね〜
やっぱ、しょうがないんである。
名曲“アリソン”は収録されてるし、あのニック・ロウによるプロデュースのせいか、完全にワタクシ好みのアルバムに仕上がってしまっているのだ。
つまり一言で語れば「パブロック的にショボイ」んである(笑)
凝ったスタジオワークも無いし、アルバムを通して短いナンバーばかりで、お手軽な印象この上ない。

んがしかし、以降の堂々たる“ジ・アトラクションズ”な、ポール・マッカートニーと共作しちゃったりもするA級ポップサウンドよりは、コチラの方が遥かに好みなんである。
実際にこのアルバムを聴く際は、いつも全13曲スキップ無しのノンストップだからなぁ。

すえた匂いのするオン・ザ・ストリートなロックンロールは、やはり最高にカッコイイのだ。
そしてチープな仕上がりだからこそ、ポップなメロディが依り一層の魅力を放つ側面もあるのよ。

加えてコステロの絶妙なねじれ具合が、また良し。

ヒジョーに女々しいチンケな男の心情を、極上のメロディでストレートに歌い上げる故に、“アリソン”は至高の名曲足りえるのだ。
どー聴いても怒っているようにしか聴こえない“I'm Not Angry”なんて、ある意味泣けてきたりする(笑)

捻くれ、怒れる若者がギター片手に、チープではあるがソリッドなビートに乗せて、極上のメロディを奏でる――
うむ、個人的に最強のスタイルだね。

もちろんこのカッコよさは期間限定で、日々精進に勤しむタイプのミュージシャン(笑)からすれば、所詮は一過性のモノに過ぎないのだろう。
しかしだからこそ貴重なんだし、刹那的な魅力があるのも事実。

そうそう、バディ・ホリーを気取ったジャケットも、これまた最高にイカスのだ。


FAVORITE CD Act.037
THE LORD OF THE NEW CHURCH - The Lords Of The New Church


The Lords Of The New Church
ロシアン・ルーレット
(Amazon)
ここまで直球なゴシック・ロックを紹介するのは、もしかしたら今回が初めてかも。
ま、ダムドに入れ込んでいる位だから、元々好みのジャンルなハズなんである。
ただ、チョイ前に流行った“ビジュアル系Jポップ”のゴスと混同されそうなのが、何か嫌なだけで(笑)
日本文化にゴシックって、基本的にありえねぇからなぁ(ウィラードみたいな徹底したリスペクトは、また別のハナシ)
ゴスロリファッションなんて、ナイーブを気取ったファンタジックなコスプレ以外の何物でもないし。

さて、何はともあれ“ロード・オブ・ニュー・チャーチ”である。
“デッド・ボーイズ”のスティヴ・ベーターズに“ダムド”のブライアン・ジェームス、“シャム69”のデイヴ・トレガンナに“バラクーダーズ”のニッキー・ターナーが一堂に会した、所謂オールスターなスーパー“ポスト”パンクバンドだ。

でまぁ、こういうプロジェクト的なバンドは得てして短命で、残されたオリジナルアルバムはたったの3枚。
しかし“ダーク調ゴシックロック”というカテゴリーにおける一つの典型を確立した点において、実に重要な意味を持つバンドなんである(コイツらの影響を受けている連中はかなり多そう)

んで、3rdアルバム“The Method To Our Madness”も良いが、やはり1stの“ロシアン・ルーレット(邦題)”が一押しだね。
以降の作品では薄れてしまう骨太なビートが、実に熱く心地良いのである。
ブライアンの超絶ギターは相変わらずだし、“ストゥージズ”のコピーから出発したスティヴのボーカルも一種独特な哀感で聴かせてくれて、もお最高ッス。

そうなんだよねぇ……オレにとって魅力的なゴシックって、結構ワイルド系なんだよな(笑)
「繊細な美意識」って形容も確かに出来るのだが、どこかアバウトっていうか、タフなんでさ。
デイブ・ヴァニアンにしたって良い意味でミーハーな部分が垣間見えるし、スティヴには妙にキャッチーな(不誠実な)音楽性を感じたりするのだ。
いや、そういった“いい加減さ”がカッコよく聴こえるってのは、ロックンロール最大の矜持なんだけどな。

〜等と書きながらも、“スージー&ザ・バンシーズ”みたいな線の細い、コテコテの耽美系ゴスパンクも大好きなワケで。
その辺の選択基準が、ワタクシ本人にもよくワカッておりませぬ(苦笑)

とりあえずこの“ロシアン・ルーレット”――
ダーク&ハード&スピード&センチメンタルに浸りたいリスナーには、お薦めの一品でございますよ。

FAVORITE CD Act.038
QUEEN - Sheer Heart Attack


Queen
シアーハートアタック
(Amazon)
さて、今回はクイーンである。
ちょうど物心がつきはじめた頃にブレイクしていたせいもあってか、非常に馴染みの深いバンドなんだよな。
メジャーシーンで活躍していたんで、田舎モンにもラジオ等で耳にしやすかったし。

デビューしてしばらくは、微妙に小難しいプログレバンドだったクイーン――
正直、ガキンチョのオレには受け入れがたいサウンドでありました。

んで、まぁ、月並みに“キラークイーン”となる(笑)
コイツでガツンときて“ボヘミアン・ラプソディー”へと続くという、あまりにミーハーなクイーン遍歴なのだ。
“ポップ”ってのは、かくも音楽を聴き始める際に大きなウェイトを占めるのよ。

しかも一度好きになると、当初あまりに仰々しくて敬遠気味だったグラム調ロックオペラサウンドが、一転して好意的に聴けてしまうというね(笑)
余談だが、おかげでザ・フーの“トミー”や“ロッキーホラーショウ”のサントラなんかも大のお気に入りになりましたとさ。
ホント、クイーン様々である。

で、今回のフェイバリットには、初期の傑作“シアー・ハート・アタック”をチョイス。
初めて通して聴いたクイーンのアルバムで思い入れもひとしお。
フレディーのボーカルは後期と変わらず表現力抜群だし、ブライアンのギターはプログレハードロックの面目躍如なテクニカルプレイを連発で、もうタマランす。
あの突き抜けるような独特のコーラスワークもすでに完成されているしね―― ある意味、初期クイーンの一つの到達点ともいえる作品か。
ポップだなんだと言いながらも、しっかりロックンロールしてるしね(とりあえず“Now I'm Here”みたいなナンバーがあると、ナンカとっても落ち着くのである(笑))
クイーン・ビギナーには是非お薦めな一枚ですな。

ちなみに名曲“伝説のチャンピオン”は6thアルバム“NEWS OF THE WORLD”に収録されております。
一般的なクイーンのイメージが強いのは、おそらくこのアルバム。
その卓越したコマーシャリズムによる収録曲はおそろしくキャッチーで、その技術力と吸引力には素直に脱帽。
しかもヒットを飛ばせるライターが複数人いるってのも、確率論的に凄すぎ。
ホント、クイーンってすげぇバンドだったんだねぇ……


FAVORITE CD Act.039
VARIOUS - あしたのジョー ソングファイル

yabukijoe
あしたのジョー
ソングファイル
(Amazon)
ホント、待ちに待ったアルバムだ。
今まで発売される事のなかった、レコード会社移行後の音源も含むソングコレクションである。

まぁ、何はともあれ“Midnight Blues”と“果てしなき闇の彼方に(荒木一郎版)”、サイコーっす!

そーいや-“あしたのジョー2”って、当時にしては珍しいステレオ放送だったんだよね。

当然、その頃の我が家のテレビは、ステレオ対応じゃなかったワケでさ。
しょうがないんで学校からの帰りに友人とチャリで寄り道して、繁華街のデカイ電気屋に行って、これまたデカイテレビで毎回心ゆくまでジョー2を堪能していたのだな(店からしたらイヤなガキだったんだろうなぁ(笑))
原作を読んで結末は知っていたんだけど、それでもあの有名な名場面がアニメでどんな風になるのか一刻も早く知りたくて、わざわざ再編集映画の“劇場版ジョー2”まで観にいってるし(――と、まてよ。あの時点ではTV版ジョー2って地元では未放映だったんだっけ?)

そもそもTVアニメ第一作からして、詳細は憶えてないがかなり一生懸命に観ていたらしいからなぁ…
――というのも小学校低学年の時分、稲中の井沢よろしく髪型をジョー風に決めようとして、あっさり親父に看破されてしまった(笑)恥ずかしい記憶が、脳裏に未だこびり付いているんだよね、悔しい事に。

んで、それくらいに思い入れの強い“あしたのジョー”の、このソング・コレクションである。
何故かジョー山中の“明日への叫び”だけが収録されておらず、若干「画竜点睛 を欠く」のは事実だ(代わりと言わんばかりに、BGMの“ローリング・ファイター”が1曲だけチョコンと収録されている)
とりあえず“劇場版ジョー2”のサントラもほぼ同時に発売したみたいだし、こちらも買えと言う事なんかね?

――まぁ、良いわ、この際だから許しちゃる。
以前発売されていた唯一のサントラCD〜“あしたのジョー 総集編”のあまりのショボサも、今なら不問してやるわい(笑)

CDの装丁も隅々まで神経が行き届いているし、リマスターされたらしい音質も非常に良好。

いや、もう何よりも単純にさ、
“あしたのジョー”
“力石徹のテーマ”
“美しき狼たち”
“傷だらけの栄光”
“Midnight Blues”
“果てしなき闇の彼方に”
“青春の終章 〜Joe…Forever〜”
――といった至高の名曲たちによるつるべ打ちに、もうコチトラはK.O寸前なのであります。

「わかってないTONIGHT!NIGHT!NIGHT!……」

「お前の熱さが、わっすれらない〜」

……ああ、夕陽をバックにトマトサンドを頬張りながら、1人ズタ袋抱えて旅に出てぇぜ(笑)


FAVORITE CD Act.040
J.GEILS BAND - Bloodshot


J.GEILS BAND
ブラッドショット
(Amazon)
70年代のアメリカン・ホワイト・ロックンロールで、当時もっとも「黒っぽい」と評された、天下無敵のB級ブルースロックバンド――
それが今回レヴューする“J.ガイルズ・バンド”だ。

まぁデビューがアトランティックで、1stアルバムが事実上ジョン・リー・フッカーやスモーキー・ロビンソンといった大御所たちのカヴァーだらけだったところから、どーいったタイプのサウンドなのかは推して知るべし、である。

とにかく彼らの泥臭くエネルギッシュなプレイはスンバらしく、そのライブアクトは最強のモノだった――らしい(笑)
だって映像としては観た事ないんだもん(ムロン、ライブアルバムからその片鱗は窺い知れるが)

ある意味、“ストーンズ”以上にルーツ・オブ・ロックンロールを感じさせてくれるバンドである。
何といってもメンバーたちは生粋のアメリカンなワケだし。
個人的には、特にマジック・ディックのハープが最高にブルージィでイカスのよ(“マジック”を名乗るセンスも最高だす)

んで、彼らの4作目にあたる“ブラッドショット”だ。
世間的には初期の代表作とされているようだが……いや、この作品に関しては天邪鬼なワタクシも全面的に同意いたしまする(とはいえ“サンクチュアリ”あたりをフェイバリットにしないあたりが、せめてもの意地だったり(笑))

つか、ガチガチのブルースから適度にポップ性を加味した本作は、後の完全メジャー化したアルバムと比べてもギリギリのカッコよさを維持しており、いやもうこのバランスが正直タマランのよ。
とにかく初っ端からビートの利いた“House Party”で、あっという間に高揚感マキシマムである。
んで、泥臭いR&Bナンバーが続いていき、終盤ではありがちに“Start All Over Again”〜“Give It To Me”のメロディが何とも染み入るのである。

アメリカン・ブルースロックの真髄、ここにあり。



Page: 1 | 2 | 3 |

HOME